菊の花に縋る

・ ページ21

.









｢はじめまして、AAです。｣


視線が一点に、私に集まる。ああ、慣れない。自己紹介は学生の頃から嫌いだった。挨拶と名前、必要最低限の短い言葉でも4機捜の人たちは礼を返してくれる。社交辞令でもありがたい。


｢Aは異動前まで1機捜にいて、業務内容はわかっているから問題ない。でも4機捜としては今日からがスタートだから、気にかけてあげて。｣

｢お願いします。｣

｢じゃあ今日も一日、よろしく。｣


色々と補足説明をしてくれる桔梗隊長の心遣いに胸中で感謝をして、もう一度目の前の人たちに一礼する。おい伊吹、ニヤニヤするな。
桔梗隊長の一言で、4機捜のメンバーはそれぞれ仕事に取りかかる。志摩と伊吹、そして私はこれから密行だ。不安が顔に出ていたのだろうか、桔梗隊長は私の肩に手を置いて"頑張って"と言ってから部屋を出ていく。本当に、優しい人だ。


｢A！久しぶりだなあ。｣

｢お久しぶりです、陣馬さん。｣

｢これからよろしくな！｣

｢はいっ、よろしくお願いします。｣

｢こっちが、俺の相棒の九重だ。｣

｢九重世人です。｣


1機捜でお世話になった陣馬さんの隣に、背の高い、凛々しい顔立ちのきっちりした男性が立っている。"九重世人"というらしい。丁寧に頭を下げてくれた。それに答えるように私も先程と同じく名乗って、一礼する。…この子はまともだろう。というかそうであってほしい。


｢Aちゃーん！早く行くよー！！｣

｢はーい。…では、いってきます。｣


二人に頭を下げて、志摩と伊吹の元へと行く。伊吹には"遅い"と言われ、志摩には目で訴えられ、初日なのに手加減がない。
受令機用イヤホンを付け、ホルスターを身につける。いつもと変わらないそれらだが、乗る機捜用車も違うし、相棒もいる。

今日から私は、機捜404になるのだ。









.

こんなに柔い棘ひとつ→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す