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__________ インタビュー記事 (続)
「大学時代、祐希との忘れられない思い出があるんです。と言っても、祐希は多分忘れてます(笑)」
私はボイスレコーダーがあるというのに、ペンを握り直して静かに話を聞いていた。
「中学・高校と、自分はバレーが上手いと思ったことはありませんでした。でもバレーが好きだから、大学でも続けることを決めたんですけど、周りにはすごい人ばっかりで、元々無かった自信が更に無くなって。練習にもあまり身が入らなかった時期がありました。」
ポツポツと、当時の心境を語る涼木。先程までの楽しげな笑顔とは打って変わって、静かに微笑んでいる。
「洸史と壱青とか、チームメイトはよく気にかけてくれてて…励ましてくれたりしたんです。それでも、やっぱり気持ちは晴れませんでした。それがずるずる続いてたんですけど、ある日の練習終わりにいきなり祐希が僕のとこに歩み寄ってきて、『お前すごいんだから、自信持てよ!あと猫背やめろ!』って背中を強く叩かれて…それだけ言って去っていったんです。もう衝撃的でした、色々と(笑)」
そのエピソードに、私にも衝撃が走った。涼木は再び、楽しそうな笑顔を浮かべる。
「その言葉で一気に目が覚めた感じがしました。自分はまだ頑張れるなって。祐希みたいなすごい人にあんな言葉を言って貰って、それを無駄にはしたくないと思いましたし、祐希と肩を並べる選手になって、もっと『すごい』って言わせてやりたいと思いました。」
「祐希はバレー選手としてもすごいけど、なにより人間性が素敵だと思います。尊敬する人です。」
そう言って締め括った涼木の笑顔は、とても晴れやかで気力に満ちていた。涼木が世界と戦う選手となって、石川と同じコートに立つ日も近いと、私はそう感じ取ったのだ。
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RIO - 小説前から読ませてもらってるんですけど、めっちゃ好きです(唐突) ほんっまにこの作品面白くて! 更新頑張ってください! (2021年12月8日 0時) (レス) @page13 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午睡 | 作成日時:2021年10月30日 22時