ふわふわり、 ページ3
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珍しく今日は寝坊してしまって、焦って支度を済ませ、家を出た。
遅刻をすることはなかったものの、朝からとてつもない労力を使った気分だ。遅刻するかもしれないというヒヤヒヤ感を味わい、精神的に疲れた。
ロビーですれ違う関係者の方や選手たちに挨拶をしつつ、自販機で微糖の珈琲を買う。
その買った珈琲を片手に体育館の方へ向かう途中で小野寺さんと会った。
｢おはよ。…あれ、今日はココアじゃないんだ？｣
｢小野寺さん、おはようございます！実は今日寝坊してしまいまして…。まだ目が覚めてないので珈琲にしました。｣
私が手に持つ珈琲を見て、珍しいと言いたげな表情をする小野寺さん。本当にその通りで、私はいつもココアばかり飲む。苦いのは得意じゃないけど、目を覚まさせるには丁度いい。
｢…ああ、道理で、｣
｢…？？｣
そう一人納得する小野寺さんに、私は首を傾げる。ちょいちょいと綺麗な手で手招きされて、小野寺さんに近づいた。
ぽん、と頭に軽く手が乗せられる。右側の髪を撫でつけるように優しく触れられて、ふふっと頭上から笑い声が降ってきた。私は顔を上げる。
｢ここ、寝癖ついてる。｣
｢えっ？！お、お恥ずかしい……。｣
鏡でチェックしてきたはずなんだけど、見落としていたようだ。背の高い小野寺さんにはばっちり見つけられてしまった。
｢Aって意外と抜けてるよね。｣
｢そう言われると精神的にダメージが…、｣
恥ずかしくて両手で顔を覆うと、また頭をぽんぽん撫でられる。
｢かわいいよ、そういうところ。｣
聞き間違いかと思ったが、くしゃりと笑顔を浮かべながら、"なんか得した気分"なんて小野寺さんが言うから、私は寝癖を抑えて"…ずるい"と呟くことで精一杯だった。
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作者名：午睡 | 作成日時：2020年9月16日 22時
