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やさしくふれていて ページ1

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「Aさん、ちょっといいですか?」




コートのそばにあるベンチに腰掛けて、少し眉間に皺を寄せながらテーピングやらコールドスプレーやらの整理をするAさんに声をかけると、すぐに俺の方を向く。


Aさんが立っている状態でも身長差がすごいのに、座っている状態じゃ真上を見上げるようなもので、首が痛そうだ。


"大丈夫だよ。どうしたの?"と優しい声で訊ねる彼女に、さっき突き指したことを話した。

手を差し出して状態を診てもらい、Aさんはついさっきまで整理していたものの中からテーピングを手に取ってベンチから立ち上がり、器用に俺の指に巻いていく。自分の手に触れているAさんの手に、ちょっとだけ緊張した。


2mもある自分と比べたら基本的に誰だって背が低く感じるが、Aさんは女性の平均よりも小柄なため、一層小さくて細く感じる。

頭のてっぺんなんて余裕で見えてしまうから、Aさんの表情とか、伏せられた目も長い睫毛も見落としがちで、そんな時は少しだけ自分の身長を恨めしく思う。

けど、俺と話す時に自然と上目遣いになって微笑むAさんはとびきり可愛いから、その時は自分の身長に改めて感謝するのだ。









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作者名:午睡 | 作成日時:2020年9月16日 22時

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