No.9 ページ9
◇
夜風に当たるだけのつもりだった。
何となく眠れないから、近所まで散歩するだけのつもりだった。
いつもと違う現状に、少し心が浮ついていただけだったのに。
「――……はぁ、はぁ、はぁ、」
ドクドクと跳ねる心臓の音が五月蝿い。
手のひらを見れば月明かりと街灯だけでも分かるほど――血に塗れていた。
視線を落とすと、その血の持ち主であろう男が二人。
夕方頃見たガラの悪さは見る影もない。
「……ああ、ああ。やっちゃった」
辛うじて汚れていない手首で顔を覆い、座り込む。
――――この島で、殺人は御法度。
もし殺人を犯せば捕まるだけじゃ済まない罰が下される。身の毛がよだつのを感じた。受け入れたくない。そんな気持ちは持っちゃいけない。
……朝方、自首しよう。
だからせめて、この汚れた二人を片付けなければならない。
手も顔も服も全身洗って、他の島民に一切気づかれないほど綺麗にして、私は罰を受ける覚悟を決めなければならない。
私の存在が、『そういえば最近見かけないね』程度の認識であればいい。
ふと脳裏に過った一週間限定の従業員。
彼ならこの場を拳一つで気絶させて収めることが出来たのだろうか。
そんなもしも話をしたところで、相手から向けられたナイフを奪い、死に物狂いで抵抗した結果が"これ"の私には、何も言うことは出来ないけれど。
オーナーや彼に、謝罪の手紙一つくらいしておこうか。
「――――A……?」
……そう思っていたのに、何故貴方がここにいる。
心臓がより一層飛び跳ねた。
耐え難い羞恥に晒された気分になった。
ああ、もう、
そんな目で見られたくなかった。
◇
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碧崎(プロフ) - にんじんさん» ありがとうございます!!!わああ嬉しい。拘った所を注目していただけてとてもとても嬉しいです!!!!頑張ります!! (2022年1月27日 23時) (レス) id: 4e74b8229e (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 凄く引き込まれるストーリーで感動してます。船に乗るシーンの描写と店主へ想いを馳せる所にグッときました!これからも頑張ってください! (2022年1月27日 20時) (レス) @page12 id: 9689beb0ab (このIDを非表示/違反報告)
碧崎(プロフ) - えんぴつさん» コメントありがとうございます。それはとても言い訳できないご指摘ですね💦全て曲を丸パクリするつもりはありません。この曲を聴いて思いついたものなので、類似してしまう恐れがあるため記載させて頂きました。ご指摘を踏まえ検討致します。 (2022年1月27日 19時) (レス) id: 4e74b8229e (このIDを非表示/違反報告)
えんぴつ(プロフ) - 他社の曲をもとに二次創作するのはやめた方が良いと思います…。 (2022年1月27日 19時) (レス) id: 764e5730fb (このIDを非表示/違反報告)
碧崎(プロフ) - ミサキさん» ありがとうございます!!そう言って頂けると本当に嬉しいです!頑張ります! (2018年9月25日 23時) (レス) id: 7dc4f8a1d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧崎 | 作成日時:2018年9月17日 15時