No.15 ページ15
◇
「――おれは、追わなきゃならない奴がいるんだ」
顔は穏やかだけど声は何処か神妙さを帯びていた。俯きがちな様子を見ると、真剣なのだと少し緊張が走る。動いてはいけないと言われてもいないのに体が強ばった。
だからお前の面倒見切れないぜってことだろうか。それとも私にもその人を探す手伝いをしてもらうぜってことなのだろうか。
「"黒ひげ"と名乗っている人だっけ」
会った時の記憶を辿って尋ねると「覚えてたのか」と言って笑ったエース。
「……そう。奴はもともとはおれの仲間だった。奴は海賊船で最悪の罪――"仲間殺し"をして船から逃げたんだ」
ギリッと歯軋りするように唇を噛んだ。握る手に爪が食い込んでいた。
仲間を殺して逃走……殺した相手は違えど、その人と私は同じではないの?人を殺して逃げた奴と一緒に、仲間を殺して逃げた奴を追うなんて、なんて馬鹿な話なのだろう。
そんな皮肉を言う度胸もない。でも気づいているんじゃないのかな。
「おれは奴の始末をつけるために、この海を逆走している」
強く決意を宣誓するように言ったエース。
始末、始末……殺すってことだよな。震えそうになる手をガッシリ握り締めて堪える。
「……私にも、それに協力しろってこと?」
恐る恐る尋ねる。怖い。怖いけど、別にそれでも構わない。何処に行けば良いのか分からなくなっている私を、今導いてくれているのはエースだ。
「それこそ違う!!――でもおれは、お前と一緒にいたいと思っちまったから、だから!」
……それは、きっと。その感情を表す言葉を私は知っている。でもきっと、きっと。私はそれに気づいてはいけない。エースに気づかせてはいけない。
49人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
碧崎(プロフ) - にんじんさん» ありがとうございます!!!わああ嬉しい。拘った所を注目していただけてとてもとても嬉しいです!!!!頑張ります!! (2022年1月27日 23時) (レス) id: 4e74b8229e (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 凄く引き込まれるストーリーで感動してます。船に乗るシーンの描写と店主へ想いを馳せる所にグッときました!これからも頑張ってください! (2022年1月27日 20時) (レス) @page12 id: 9689beb0ab (このIDを非表示/違反報告)
碧崎(プロフ) - えんぴつさん» コメントありがとうございます。それはとても言い訳できないご指摘ですね💦全て曲を丸パクリするつもりはありません。この曲を聴いて思いついたものなので、類似してしまう恐れがあるため記載させて頂きました。ご指摘を踏まえ検討致します。 (2022年1月27日 19時) (レス) id: 4e74b8229e (このIDを非表示/違反報告)
えんぴつ(プロフ) - 他社の曲をもとに二次創作するのはやめた方が良いと思います…。 (2022年1月27日 19時) (レス) id: 764e5730fb (このIDを非表示/違反報告)
碧崎(プロフ) - ミサキさん» ありがとうございます!!そう言って頂けると本当に嬉しいです!頑張ります! (2018年9月25日 23時) (レス) id: 7dc4f8a1d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:碧崎 | 作成日時:2018年9月17日 15時