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No.13 ページ13




――あっという間に島が離れていく。

逃げ出してしまったという実感が何となく湧いた。船を操縦するエースを横目に私は座っているだけのお荷物と化して、ぼんやりと豆粒のようになっていく島を眺める。


ふと、オーナーの顔が再び頭を過った。あの人は朝目覚めたらまず、誰もいないことに気が付くのだろう。そして手始めに家中を探すだろうか。


『おーい、怒って隠れてんのか』って。『俺がお前のプリンこっそり食べたの気づいたのかー?』って、そう言って探してくれるだろうか。

プリン食べたことなんてその日の内に気づいて晩ご飯オーナーの苦手なちくわ料理にしたの覚えてないの?……なんて、馬鹿みたいな妄想に言葉を返したところで虚しくなる。


オーナーは私にとって父親のような存在だ。この島に捨てられていた赤ん坊の私を拾ってくれたのも、Aという名前を付けてくれたのも、住む家を与えてくれたのも、言葉を教えてくれたのも、家事を叩き込んでくれたのも、全部全部オーナーだった。


「……うぁっ、」

堪え切れずに涙が溢れてきた。しまった。オーナーのことなんか考えなきゃ良かった。せめて遺書でも書いて残しておけば良かった。今死ねば夢枕にでも立つことが出来るだろうか。



エースに悟られないように喉の奥を絞めて言葉を飲み込んだ。

どういう仕組みか炎と化したエースの足元がエンジンとなっていた。海を割いて進む船の音は私の嗚咽など平気でかき消してくれた。


――私を愛してくれたであろう二十年近い仲のオーナーを切り捨て、私は今日初めて会ったエースと共にいる。その現実にゾッとした。


自分の行動を後悔した。後悔しきれないほど後悔した。外に出なければ、買い物に出かけなければ、散歩に行かなければ良かった。……彼と、出会わなければ良かった?それは余りに責任転嫁が過ぎる。



吸って、吐いて、深呼吸。

顔を上げた。月が輝いていた。これまで見た月とは同じものとは思えなかった。それほど綺麗だった。綺麗だったと、オーナーに伝えることはもう出来ない。



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設定タグ:ONEPIECE , エース , カンザキイオリ   
作品ジャンル:アニメ
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碧崎(プロフ) - にんじんさん» ありがとうございます!!!わああ嬉しい。拘った所を注目していただけてとてもとても嬉しいです!!!!頑張ります!! (2022年1月27日 23時) (レス) id: 4e74b8229e (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 凄く引き込まれるストーリーで感動してます。船に乗るシーンの描写と店主へ想いを馳せる所にグッときました!これからも頑張ってください! (2022年1月27日 20時) (レス) @page12 id: 9689beb0ab (このIDを非表示/違反報告)
碧崎(プロフ) - えんぴつさん» コメントありがとうございます。それはとても言い訳できないご指摘ですね💦全て曲を丸パクリするつもりはありません。この曲を聴いて思いついたものなので、類似してしまう恐れがあるため記載させて頂きました。ご指摘を踏まえ検討致します。 (2022年1月27日 19時) (レス) id: 4e74b8229e (このIDを非表示/違反報告)
えんぴつ(プロフ) - 他社の曲をもとに二次創作するのはやめた方が良いと思います…。 (2022年1月27日 19時) (レス) id: 764e5730fb (このIDを非表示/違反報告)
碧崎(プロフ) - ミサキさん» ありがとうございます!!そう言って頂けると本当に嬉しいです!頑張ります! (2018年9月25日 23時) (レス) id: 7dc4f8a1d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:碧崎 | 作成日時:2018年9月17日 15時

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