愛故に。

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『お、はようございま...え？！』

「...はよ。」

『ど、どうしたんですかそんなに濡れて...！！』

「雨降ってたの忘れてた。」



事務所内にも少しばかり響く雨の音。

いや、かなり降ってたのに忘れるってどういうこと...。


いつもの赤い髪からは水滴が滴っていて、上着もびしょ濡れ。

鞄からタオルを取り出して濡れた髪や腕を拭き始める中務さん。





『ドライヤー、使いますか...？』

「めんどい。」

『でも風邪引いちゃいますっ』

「...やって。」



ドライヤーの音しか聞こえない室内。

他のメンバーのみんなはまだ来ていなくて、早く来てという思いもあればここで少しでも仲良くなれたらいいなぁって思いもある。



「...最近さ、」

『はい？』

「何も言われてへんの？大人げない先輩に。」

『...っ中務さんのおかげで、』

「ふーん、ならええけど。」



どんな表情をしてるかわからないけど、言葉と声から優しさが伝わってくる。

この人、不器用なんだなぁ。


まだぎこちないけど、少しはまともに話せてるはず。

進歩、しましたね。




『...嬉しかったです、中務さんの言葉。』

「っべ、つに...聞いててイライラしたから言うただけやし。」



思わず髪を乾かす手を止めた。

だって、耳赤いんだもん。


くすりと一つ声に出して笑うと"笑うなや"と怒られてしまった。



まだ、この空気に浸りたい。

いつもより長くドライヤーをしたのは内緒。







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