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『まだ冷えるね、』
「春はまだ来ないなぁ」
"はー"と龍友くんが白い息を吐いた。
たったそれだけの動作なんだけど、すごく絵になっていて。
街の灯りに照らされる綺麗な横顔に、胸の心拍数が上がっていく。
「いっつも歩いて帰るん?」
『うん、近いから』
「...夜遅いのに、歩いて?」
心配そうな声で言うから、"大丈夫だよ"って笑ってみせた。
それでは信用が足りなかったみたいで、んーって少しだけ不満そうに返してくれる。
『龍友くんは家こっちなの?』
「ん、駅前のコンビニあるやん。そこの近くに建ってるでっけぇマンション。」
『あー、一つだけ飛び出てるからわかりやすいところだ』
「そーそー、それ」
意外と家が近いことが判明した。
だから今日も私の後ろからおでん食べれたのか...。
また会えるかなとか、またこうやって一緒に帰れるかなとか。
私からは、まだ恥ずかしくて言えない。
「ほんまに近いな」
初めて自分の家と事務所の距離が近いことを恨んだ。
もうばいばいしなきゃいけない。
少しくらい、素直になっていいよね。
「あかんわ、帰したくない。」
『私もまだ帰りたくない、なぁ...』
すると手首を優しく掴まれて、そのまま抱き寄せられた。
冷たいはずの外の空気も、私たちの周りだけはなんだか暖かく感じる。
人通り、少なくてよかった...。
「どこでそんな言葉覚えてきたん」
『...勝手に口から出てきた』
「あと10秒、俺にちょうだい。」
私にはその10秒が、1分よりも長く感じて。
そっと、龍友くんの背中に腕を回した。
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斐禄 - 最高すぎます……(語彙力) (2019年10月18日 18時) (レス) id: 8cbbf12531 (このIDを非表示/違反報告)
Yuu(プロフ) - 続編お願いします!笑 (2019年1月19日 11時) (レス) id: eb6070b8e6 (このIDを非表示/違反報告)
萌夏(プロフ) - 面白かったです!続編書いて欲しいです! (2018年8月28日 18時) (レス) id: 477e912728 (このIDを非表示/違反報告)
る - 最高でした!龍友くんメインのお話でこんなにきゅんきゅんするのは初めてでした!ありがとうございました! (2018年5月13日 17時) (レス) id: 563bc38863 (このIDを非表示/違反報告)
葵子(プロフ) - 凛々さん» コメントありがとうございますっm(_ _)m嬉しいです!(;Д;)(;Д;) (2018年4月5日 14時) (レス) id: 6b76cfea77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵子 | 作成日時:2018年2月13日 19時