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きっと、私の声は震えていたと思う。
『私っ...ちゃんと約束した通りに、篠田さんのこと......』
忘れさせてあげられるか、わからないんです。
なんて。龍友さんのためだと思ってやってきたことも、結局は自分のためでしかなかったのかもしれない。
ただ、私が龍友さんの傍にいるための契約に過ぎないのだ。
私が、龍友さんに漬け込んでいるとしか言い様がない。
まだ、好きなんでしょ?
彼氏がいるから、諦めたいだけ。
篠田さんに彼氏がいなかったら、一途な龍友さんなら猛アタックしてるに違いない。
「...まだはっきりとはしてへん。」
『っ...、』
現実的な言葉に思わず唇を噛み、俯く。
わかってる。人の心はそう簡単に変わらない。
だって、私が現にそうだから。
息もできないくらい不安定な空気を壊すように、明るい声で龍友さんは言った。
「でも、最近はお前のことで手一杯やからなあ」
『......え?』
「案外僕もAには振り回されてるよ。」
『そんなこと...』
「...だからあんまり僕のこと無視せんで?」
『む、無視なんてっ!』
「結構僕だって寂しいんやから」
『それって、』
少しくらい、期待してもいいってことですか。
ほんの少しだけだとしても、私のことも見てくれてるってこと?
差し伸ばされた手を恐る恐る握ると、すかさず握り返してくれた。
たったそれだけなのに今までの不安はなくなっていて、安心してる自分がいる。
一筋の希望が、見えた気がした。
でも、本当に苦しいのはここからだって私は知らなかったの。
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みん(プロフ) - 素晴らしい文章力で、引き込まれます!ありがとうございます! (2019年5月20日 9時) (レス) id: f912ed750b (このIDを非表示/違反報告)
ARM26(プロフ) - すごく好きです…!こんなに引き込まれて一気に読んだのは初めてです!これから続編読むのですが楽しみ半分、終わりに近づいてる寂しさ半分…終わりまで楽しませていただきます! (2019年1月18日 21時) (レス) id: 6024ec169a (このIDを非表示/違反報告)
GENE love - 葵子さん» 賞味期限2も読ませてもらいました! ほんまに泣きました。 ほんまに体験してるみたいな気分になって切なくなって感動です! 頑張ってください! (2019年1月13日 20時) (レス) id: 1e4df9a365 (このIDを非表示/違反報告)
釈迦で~す推し。(プロフ) - 愛故にを読んでるとき号泣してたので、ハンカチ用意しときます。真顔 (2019年1月13日 14時) (レス) id: 52e976e0eb (このIDを非表示/違反報告)
葵子(プロフ) - 釈迦で~す推し。さん» これからもっと切なく......(;Д;)(;Д;)← (2019年1月13日 14時) (レス) id: 6b76cfea77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵子 | 作成日時:2018年11月25日 18時