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冷たく澄んだ冬独特の空気がツンと鼻を刺す。
それが心地いいような、痛々しいような曖昧なところ。
街の灯りが隣を歩く数原さんの横顔を照らしていて、とても綺麗。
ちょっと鼻が赤くて可愛い。
白くなる息を一つ吐いて、マフラーに顔を埋めた。
「猫みたいやね」
『数原さんはトナカイみたいです』
「お前だって鼻赤いやんか...」
いつもみたいに目尻をきゅっとして笑う数原さんが、
あ、と何かに気づいたように私に手袋を差し出す。
『え、え...?』
「手袋、忘れたんやろ?」
『...いいんですか?』
「うん。僕いま温かいから。」
「飲むときに手震えて零されたら困るしな?」
『...そこまでじゃないですもん』
手袋を受け取って手に通せば温もりがじんわりと広がる。
ああ、もう。舞い上がる気持ちが素直に顔に出てしまいそうだ。
もし、私が好きって伝えたら数原さんはなんて言うんだろう。
少し距離ができたから見える彼の背中。
数原さんに遅いーと声をかけられて我に返った私は、焦りながら駆け足で隣へ並ぶ。
きっと、数原さんは困ったように笑ってありがとうって言うんだろうなあ。
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みん(プロフ) - 素晴らしい文章力で、引き込まれます!ありがとうございます! (2019年5月20日 9時) (レス) id: f912ed750b (このIDを非表示/違反報告)
ARM26(プロフ) - すごく好きです…!こんなに引き込まれて一気に読んだのは初めてです!これから続編読むのですが楽しみ半分、終わりに近づいてる寂しさ半分…終わりまで楽しませていただきます! (2019年1月18日 21時) (レス) id: 6024ec169a (このIDを非表示/違反報告)
GENE love - 葵子さん» 賞味期限2も読ませてもらいました! ほんまに泣きました。 ほんまに体験してるみたいな気分になって切なくなって感動です! 頑張ってください! (2019年1月13日 20時) (レス) id: 1e4df9a365 (このIDを非表示/違反報告)
釈迦で~す推し。(プロフ) - 愛故にを読んでるとき号泣してたので、ハンカチ用意しときます。真顔 (2019年1月13日 14時) (レス) id: 52e976e0eb (このIDを非表示/違反報告)
葵子(プロフ) - 釈迦で~す推し。さん» これからもっと切なく......(;Д;)(;Д;)← (2019年1月13日 14時) (レス) id: 6b76cfea77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵子 | 作成日時:2018年11月25日 18時