喰べないからそばに居て。

青鬼と人間―１０― ページ12

館を歩いて、ベッドがある部屋に入る。
マフラーを外し、ベストを脱ぐ。ブーツと靴下も脱いでベッドの近くに置く。
シャツは……ボタンを二つ外して、眼鏡とヘアゴムを近くのテーブルに置く。


「A、は、ここで、ねるの？」
「えぇ、本当は家に帰りたいのだけど…。」
「………A。」
「シアが嫌そうだから、此処で寝ることにするわ。」
「ありが、とう、A、シアは、うれしい。」

一瞬だけ、青鬼に戻ったからあんな事言っちゃたけど、早めに外に出ないとね。
足はまだ痛いし…今はちゃんと休もう。



「……シアはいつまで此処にいるのかしら？」
「？
　シア、は、Aの、ちかくで、おきる、のを、まつ。
　A、は、あんしん、して、ねてい、て。」
「いや、安心できないわ。それは……。」

シアが笑顔で私が寝ようとしているベッドに座っている。

「ねれない、のなら、シア、が、“ひざまくら”？？して、あげる。
　……おいで？」
「なんで膝枕なの！？」
「シアが、喰った、人間、は、ちいさい、こども、に、していた。
　記憶は、まちがえ、ない。こどもは、とても、あんしん、して、ねていた。」
「………膝枕したいのね？」
「うん！」
「仕方ないわね…。」

シアの膝に頭を乗せる。シアの青い顔が、笑顔になる。




……喰べられませんように。

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