アイツの空６ (ページ6)

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それを聞いた結衣ちゃんが。

「私だってこんな三十路おっさん、
興味ありません」

口ではそう言いつつ、
少し寂しそうな顔したの。

見逃せなかった。

あれ？

もしかして・・・

専務の愛人になろうとしてたとこ、
ホテルまで乗り込んで助けてくれて、
その後ずっと家族ごと養ってもらってるんだもん。

奨学金の返済も、
シンゴが立て替えたって聞いてるし、
先々月亡くなった結衣ちゃんのお母さんの葬儀も、
全部、シンゴが取り仕切ったって・・・

ここまで何の下心もなしにしてもらって、
惹かれてくのも無理ないよね。

「けど二人、案外、
美女と野獣でお似合いだよね」

谷崎さんがからかってる。

「誰が野獣やねん。
何ヶ月も一緒に暮らしてんのに、
指一本触れへん紳士やで。
王子やろ」

シンゴががっはっはってまた笑った。

結衣ちゃんの切なそうな顔、
全く気付いてる様子がない。

その時、つけっぱなしの大画面のテレビに、
亮くんの顔がアップで写った。

叔父の経営するウィステリア化粧品が出してる、
メンズ洗顔フォームのCM。

この続きは・・・

見なくても分かる。

章大が亮くんの後ろから出てきて。

洗顔フォームをふざけた感じで取り上げる。

洗面所で２人がわちゃわちゃ取り合いになって。

最後に、
憧れの女の子、

女優の紗羅ちゃんに、

花束を突き出して。

紗羅ちゃんが、

『選べない、だって肌が二人とも綺麗なんだもん！』

そう絶叫するっていう、コメディなオチ。