アイツの空６ (ページ41)

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亮だけが、
俺を含み持たせた笑いで出迎えてくれた。

「すいません、勝手なことして」

運転席の萩野さんに謝る。

ひたすら怖いねんけど。

萩野さんが後部座席の俺を振り返って、
ギッて睨みつけてきた。

けど、それだけ。

「藤沢社長に事情は伺いました」

許してもらえたみたいで、ほっとした。

「亮、ごめんな」

「ううん。
良かったな」

ひそひそ声で言うて、俺に目配せしてくる。

亮は、事務所に内緒で、

咲ちゃんて人と付き合うてるねん。

Aより一つ歳下でさ、
なんとバツイチ。

結婚する前から亮と付き合うてたのに、
親に無理矢理結婚させられて。

その結婚相手に指一本触れさせへんかったら、
逆上されて暴力振るわれてんて。

実家に逃げ帰って来てんけど、
そいつが離婚に応じひんかって、泥沼化して。

なんとか裁判で離婚が成立したら、
今度はストーカー化して困り果ててたんを、
亮が連れて来てん。

俺も一緒のマンションにかくまって、隠れて暮らしてる。

こんな状態、いつまでもあかんて、
亮が一番分かってるのにな。

二人見てると、ほんまに幸せそうやねん・・・

俺は内緒とか無理な人やから。

事務所の社長には、
実はもう言うてもうた。

パーティーでAに会うて。

やっぱり好きや思って。

Aに伝える前に、
認めてもらいたい思ってんもん。

うちの社長は、
まだ４０代のやり手の女社長。

その時はな、

「前の彼女が忘れられない？
別にいいんじゃない？」

言われただけやねん。