アイツの空６ (ページ28)

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シンゴの驚いた声が微かに聞こえた。

「さぼったらあかんやろ。
はよ戻れや」

相変わらず、声がでかい。

結衣ちゃんの声はほとんど聞き取れないのに・・・

「どしてん？
なんでまた泣く？
今日はみんな泣きたい日なんか？」

おろおろしてるシンゴの声。

あんなに優しい声、出せるんだ。

大丈夫。

きっとうまくいく・・・

午後の取材。

深呼吸して、ウィステリアの本社の自動ドアをくぐる。

叔父の秘書の坂本さんが、
私を見つけて、駆け寄って来た。

それとシャンプーの担当者の、
水上さんて女の人も。

「Aお嬢様。
今日はご足労願いまして・・・
当社の新商品を特集で取り上げて下さるとお聞きしてます。
よろしくお願いします」

坂本さんがペコペコ頭下げて言うもんだから。

水上さんの顔色が変わって、
慌ててる。

やりにくいな・・・

「あの、今日はこちらの方が取材をお願いしたんです。シャンプーの特集も、申し訳ないんですが、
ウィステリアさんのものだけではなくて・・・」

特集の趣旨を履き違えられると困るし・・・

「それは分かっております。
社長もお待ちです。
お嬢様のお仕事ぶりを、
是非、ご覧になりたいとおっしゃってまして・・・」