アイツの空５ (ページ26)

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だけど、１８時になったら、
やけに急いで編集室を出てったから。

なんか気になって。

私も慌ててバッグ引っつかんで、
エレベーターに乗った結衣ちゃんを追いかけるべく、
階段で駆け下りたら、
踊り場までたどり着いたところで、

「結衣、逃げるなんて許さんからな！」

階下の方からシンゴのバカでかい声がここまで聞こえてきた。

結衣ちゃんの声は聞こえるものの、
何言ってるかまでは分かんない。

「まあ、腹割って話そうや。
好きなとこ連れてったるわ。
なんでもおごるから言うてみ」

それが最後に聞こえたセリフ。

二人は会社を出てったみたい。

シンゴに任せておけば、
きっと悪い方向には行かない。

大丈夫。

自分に言い聞かせる。

信じたいだけ。

結衣ちゃんの心を開けるのは、
章大だけなのかもしれない。

それを認めるのが怖くて・・・

しばらくぼんやりしてたら。

「A先輩・・・」

背中で戸惑った章大の声が聞こえた。

黙ったままでいたら、
階段、ゆっくり降りて来る気配。

「ごめん・・・」

一言だけ、切なく押し出した後で、
背中から優しく抱きしめてくれた。

鎖骨のあたりにある、
顔に似合わないたくましい腕。