アイツの空 (ページ7)

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そんなにまだ有名なグループってわけでもないし。

ここはやっぱり、
今一番流行ってる曲をリクエストしておく。

「分かりました。
この曲ですね？」

イントロが流れてきて。

ショータがマイクを持った。

ドキドキしてくる。

画面見てるショータの横顔。

マイクを持つ手。

盗み見てる。

ショータの声、本当に好き。

飲み会のたびにカラオケに行きたいもん。

「先輩が元気出してくれて良かったです。
A先輩は笑ってんのが一番です」

本当に無意識に罪な男なんだ。

夢みたいな一時間。

一時間をこんなに短く感じたのは、
初めてかも。

時間は平等には出来てないのだ。

外に出たら、
雨は上がってた。

駅までの道を二人で歩く。

仕事ではこんな場面、
いくらでもあったけど。

今は違う。

この瞬間のショータを、
私だけが独占してる。

歩道橋の上。

中頃まで来て、
ショータが不意に立ち止まる。

「A先輩、見て」

ショータが指差した先には、
大きな虹がかかってた。

「綺麗・・・」

思わず立ち止まって、ショータの隣で空を眺める。

何だかさっきまでの落ち込みが、
ちっぽけなことのように思えてきた。