アイツの空 (ページ5)

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「はい。
今、終わったんで。
僕、ほんまにご馳走します」

屈託ない笑顔で笑う。

後輩におごってもらうわけにいかないけど。

「ありがと。
じゃあお茶でもし直そうか」

窓際の席に向かい合って座る。

デートみたい・・・

デートだよね。

デートってことにしておこう。

ここ数年、
婚活に忙しくて、デートなんて久々だ。

ショータが、

「取材以外でA先輩と二人って初めてですね」

そんなこと言うから。

余計に意識しちゃうじゃない。

「ここのケーキ、美味しいですね」

ショータのきらきらの笑顔。

見てるだけで癒される。

本当は気付いてるよ。

奥底に閉じ込めた自分の気持ち。

ショータをただの後輩じゃなく、見てること。

だけど叶うわけもないし、
そんな夢見てる年齢でもないし。

ショータには、結衣ちゃんていう、
可愛い新人の彼女だっている。

早く結婚して、
平気になりたい。

逃げたかったんだ。

このぐるぐる巻きの出口のない迷路のような、
ショータへの想いから。

「A先輩、元気出して下さい。
失恋した時にはケーキとカラオケです。
カラオケ、行きませんか」

紅茶を飲み干したショータが立ち上がる。

「カラオケ？」

そうなのか。

失恋した時の特効薬は、
ケーキとカラオケなんだ。

知らなかったわ。

お会計する時、
財布出したのに。

「今日は俺のおごりです」

あっさり、断られて。

胸がきゅんてなった。