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シンゴが私の髪に手を伸ばす。


「いいよ。
自分で取るから」


言うものの。

鏡もないし、取れない。


「ええから。
おとなしいしとけって」


シンゴのものすごい真剣な顔が、
ぐいっと近付いてくる。

近過ぎ。

思わず、シンゴの手を払いそうになる。



その時。

バンって。

ドアがすごい音でしまった。


風のせいかと思ったら、
ショータが立ってる。


「しんちゃん、電話です。
3番に専務から」


「おう。
わざわざありがとうな。
よう分かったな、ここ」


シンゴが、慌てて駆けてく。


風の舞う、屋上。

ショータが、私にゆっくり近付いてきて。


「俺が取ります」


一言だけ言って、
私の髪に手を伸ばす。


まとめた髪に絡まった落ち葉は、
なかなか取れないの。

指が髪に触れるかすかな感覚。

胸が高鳴って、苦しい。


「はい。取れた」


ショータが笑った。


それだけなのに、胸がつかまれたみたいになる。

寒さなんて、不思議なぐらいに感じなくて。


「A先輩、まだ寒い?」


見透かされたように、
ショータに聞かれた。

さっきから、敬語じゃない。

ここ、職場なのに・・・


ううん

そう答えなきゃ、
ショータは、すぐに戻ろうって言う。


分かってるのに。

私、先輩だから。


「うん。
寒いね」

そう言うしかない。

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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2017年7月7日 9時

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