心の距離【Kei.I】4th

番外編:ずっとドキドキ(2) ページ49

伊野ちゃんは高くて甘い声で私に伝える。

「うーんたしかにそうだけどぉ。


Aのそんな顔見ちゃうと俺だって出来る事してあげたいじゃん。

Aのこと寂しがらせるの俺が嫌だし。

あーでも風邪移しちゃうかぁ。」


彼が私のことを特別て思ってくれていることがよく分かる言葉に私の熱が上がりそう。


だけど彼にからかわれたくないからそれを隠す。

 
「お泊りは今日は平気だから。

寂しいのもお仕事行ったら無くなるから。」

 
私の言葉に彼はまたお兄さんのような言葉を掛ける。

「うん。じゃあお仕事頑張ろうね。」


 彼にとっては何てことないやり取りかもしれない。

もしかしたら私を仕事モードにさせる為に言ったことなのかも。


だけど私の方が年上なのにこういうやりとりが初めてでわたわたする。

 


そして落ち着かなくて借りてるパーカーのタオル地の袖をきゅっと掴んだり撫でたり忙しなく手を動かす。

 

着心地が良くてお気に入りになりつつあるそれ。

 私のその行動に彼は反応する。

 
「あっ！ このパーカーふわふわで気持ちいいよねぇ。

気に入った？」

 

コクコクと頷く。


頷きながら彼の言葉に引っ掛かりを覚える。


少し考えてから彼を見てその理由に気づきまた赤面してしまう。

 
そして機嫌を良くした彼がまた私を動揺させる。

 
「そしたら持って帰っていいよ。

Aにそれあげちゃう。」

 
えっ？ くれるの？

 
服をもらうという友達あるあるを急に出されて戸惑う。


そしてさっき気づいてしまったあることが気になって彼を直視できない。

目線を下げたまま返事をする。


「あっ。貰うのは申し訳ないから大丈夫なの。」


「遠慮しなくていいのに。

でも着ちゃってるやつはいらないかぁ。」

 
私の辞退に急にしゅんとする伊野ちゃん。

それに対して首を思いっきり横にふる。


「ううん、そういうことじゃなくてこれ良いものだから私が貰うにはもったいなくて。」


私の返事に今度はにこにこしながら今度は別のことで私をドキドキさせる。

 
「そっかぁ。

そしたら色違いで持ってるしそれはA用に置いておくね。」

 

私がこの家に来てもいいのが今日で最後じゃないと彼の言葉で分かる

それにドキドキして顔に熱が籠りどうにもならなくて逃げるように早口になる。


「あの。私着替えてお化粧とかしてくる。

　寝室とかお借りします。」

 「はーい。」

私の気持ちとは正反対ののんびりな返事。

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