心の距離【Kei.I】4th

弱い心 ページ34

伊野ちゃんが今から家に来てくれる。

そのことでひどく安心している自分に嫌気がさす。

自分の弱い心のせいで彼に甘えてしまったから。


そして


彼との電話が終わり座っていたベッドに身体を投げ出し散々泣いたはずなのにまた涙が出てくる。


自分のトラウマが呼び起こされた出来事から2日も過ぎてるのにまだ心は戻らない。


社会人だからちゃんと会社に行って仕事もする。

だけど夜になると何にもやる気が起きなくてこんな状態で過ごしていつの間にか朝を迎えている。


本当は伊野ちゃんから掛かってきた電話も取らないつもりだった。

彼の声を聞いて自分がどうなってしまうのか予想が出来ていたから。

そして怖かった。

私のことを何でも分かってしまう彼が電話越しでも私のいつもと違う状態を見破ってしまいそうだったから。


だからしばらくコール音を無視していた。



なのにそれとは反対に私の心は知ってしまっている。


彼の男の子なのに高くて甘い声や柔らかい雰囲気を感じるとすごく安心することを。


1度その心地よさを知ってしまうと心が我慢できなくなる。


だから安心したくてすがるように彼の電話に出てしまった。




そして案の定、伊野ちゃんは私がいつもと違う様子なのが分かりそれを心配して優しく声を掛けてくれる。


その声を聞いてしまうと我慢していた涙が自分の意思では止められなくなってしまった。



泣きながらこんな状態で彼に伝えるなんて思ってもなかった言葉を嗚咽の合間に必死で伝える。


『会いたい』

自分のトラウマのことで男の子にこんなこと言う日が来るなんて思ってなかった。


そしてそれは伊野ちゃんが私の中で大きな存在になっていってる証明。



そして



「もう少しで着くよね。」


彼を初めて自分の家に迎え入れる準備をする。

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