心の距離【Kei.I】4th

バイバイじゃなくて ページ24

Kei Side

お互いの想いを伝えあった時間は終わり今は帰る支度が終ったAを玄関で見送るところ。

 

「本当に今日の夜は来なくて大丈夫？」

 

彼女はまだ本調子ではない俺の様子を心配しくれる。

 

「うん。今日1日ゆっくり休んだら夜には体調戻るから心配しないで。

 

それにAあんまり寝れてないでしょ？

 

今日は金曜日だし夜はゆっくり休んでほしいの。」

 

本当は今日も会いたいけど風邪を移してしまわないか心配なこともあって遠慮する。



俺のその言葉に心配顔ながら納得する。



「わかった。明日のお仕事もあんまり無理しないでね。」

 

そして最後に改めてお礼の気持ちを伝える。

 

「Aが来てくれたから身体だけじゃなくて心も元気になれたよ。

 

ありがとね。俺またこれで頑張れちゃう。」

 

俺の言葉に嬉しそうな顔をしたけどお姉さんみたいに注意する。

 

「もぅ、しばらくはあんまり頑張っちゃダメだよ。」

 

「はーい」

 

そして彼女が扉を開ける為俺に背を向ける。

 

だけど

 

「まって！A！」

 

彼女は自分を引き留める言葉に驚いてまた俺の方に向き直す。

 

「ね。『いってきます』て言ってほしいの」

 

「へ？」

 

俺の突然のお願いに驚いたのか初めて聞く気の抜けた声を出す。

 

「『ばいばい』は寂しいから『いってきます』て言ってほしいの。」

 

その理由を聞いて彼女は子供みたいな笑顔になる。

 

「そしたら伊野ちゃんもちゃんとお見送りしてね。」

 

そう言って俺の顔を見ながら笑顔でドアノブに手を掛ける。

「いってきます！ 伊野ちゃん！」

 

「はーい。いってらっしゃいA。」


俺もそれに対して笑顔で手を振りお見送りをする。



彼女といつか毎日『いってきます』も『ただいま』も言い合える関係になりたい。



二人の心の距離がまた近づいた日

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