心の距離【Kei.I】 Second (ページ46)

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スタート地点ページ46

Kei Side

目の前で子供のように泣くAちゃん。

友達になれた喜びに浸る前に彼女を泣き止ませることが先決だ。

本当は俺の言葉で彼女の涙を止めたい。

だけど自分の力じゃ彼女の涙を止めれないと悟った。

だから彼女が泣き止む方法を考える。

悔しいけどあいつの力を借りないとダメみたい。

そして

ハンカチを出して立ち上がり彼女の真横まで
行って膝をつく。

Aちゃんを見上げながら絶対泣き止んでくれる言葉を掛ける。

「ね。

お願いだから泣かないでAちゃん。

目が真っ赤になってお家帰ったらさ。

山田にまた心配掛けちゃうでしょ。」

そしてAちゃんに持ってたハンカチを渡す。

「これ使って。」

俺の言葉を聞いてハンカチを握りしめながら
泣くのを止めようとするAちゃん。

それを静かに見守る。

『本当は頭とか撫でてあげたいんだけどな。』

だけど今の俺達の関係だとこれが精一杯。

そして涙は止まり。

「もぅ大丈夫です。」

彼女から小さな声で返事があった。

「ほらぁ目赤くなっちゃってるよ。」

「こんな顔で帰ったら大変なことになっちゃいますかね。」

『はぁ～

やっぱりまだまだ山田にはかなわないなぁ』

すると彼女はハンカチを見て俺に笑顔を向けてくれた。

「ハンカチありがとうございました。

洗って返します。

これ伊野尾さんと同じですね。」

俺が彼女に渡したのは青色のハンカチだった。

1年前は名前も知らなかったきみ。

そのきみが俺と友達になって名前も呼んでくれるなんて１年前の俺が知ったらきっと驚いちゃうね。

やっとスタート地点に立てた。

二人の心の距離が少し縮まった夜。