心の距離【Kei.I】 Second (ページ39)

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聞けなかった言葉ページ39

Kei Side

知念と大ちゃんと一緒に
山田のマンションを出たけど
さっきAちゃんから聞けなかった
事が気になってしまう。

「ごめーん。

俺、ちょっと寄りたいとこ思い出したから
別で帰るねぇ。」

俺の急な発言に驚く二人。

「えっ？

そうなの？

明日も仕事だからあんまり遅くならないで
ね。」

あんまり深くは聞かずにお母さんみたいに
送り出してくれる大ちゃん。

そして二人と別れてまたマンションの
近くまで戻りながらAちゃんに連絡する。

だけどあんまり期待はしていなかった。

夜のこの時間の外出は心配性な
山田が許してはくれないと思ったから。

だけど

「うん、じゃぁ気をつけて来てね。

待ってるから。」

電話を切り頬が緩む。

だけど同時に緊張もしてくる。

「会ってお話ししたいってどっちの意味なんだろう。」

彼女のさっき伝えたかったことは
友達の件の結論だろう。

真面目だからダメな方でもきっちり
誠意を見せるために直接伝えそうな彼女。

まもなく答えが出ることなのに気になって仕方ない。

そして

彼女から待ち合わせのお店のURLが送られてくる。

俺は急いでそのお店に向かった。

Aちゃんから教えてもらったお店は
山田の家から徒歩5分くらいの所にあるカフェだった。

夜遅くまでやっているらしく店内は照明が落とされていてカフェというよりBarみたいな雰囲気。

『お洒落なお店だぁ』

入り口で彼女の名前を告げると少し奥まった他の席からはあまり見えないような席に案内される。

見た限りこのお店は客層が上で若い女の子があまり来ないみたい。

こういうさりげない所で彼女の気の使い方がよくわかる。

『山田と一緒に居て自然に身についたのかなぁ。』

彼女のことを思いながらドリンクメニューを見てAちゃんを待つ。

そんな時間を5分くらい過ごしていると
こちらに早足で近づく靴音が聞こえた。

「お待たせして。ごめんなさい。

　伊野尾さん。」

「ううん。俺も今着いたところだからね。」

俺の言葉に安堵した表情になり
向かいの席に座るAちゃん。

こうして二人の時間がまた始まった。