心の距離【Kei.I】 Second (ページ21)

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心の準備も出来ないままページ21

『どうしよう。

あと、30分で皆が来ちゃう』

私は弟の家で唐揚げを揚げながら
あと30分後にやって来る人達に
ドキドキしていた。

思い返せば30分前。

弟の家で彼の誕生日をお祝いする
料理を作っている最中に
自分のスマホの電話が鳴った。

相手は仕事現場ではあまり電話を
掛けてこない弟。

一瞬仕事が入ったかと思ったが
電話に出てみると予想外のことを言われた。

『Aお疲れさま。

あのね。

今日のことなんだけど・・・』

ものすごく言いずらそうにしている弟。

『今日どうしたの？

お仕事入っちゃった？』

すると慌てて否定する涼ちゃん。

『ううん。違うの。

今からスタジオ出て家に向かうんだけど・・・』

そしてまた言葉が途切れる。

彼の歯切れの悪さを不思議に思いながら
次の言葉を静かに待つ。

すると今まで彼がしたことない
お願いを私にしてきた。

『その。

メンバーも家に呼んでいいかな？』

メンバー=男の子

心の準備もせず会えるわけがなく
どう答えたらいいか分からず黙ってしまう。

すると、弟は私が答える正解が
一択しかない質問を投げ掛けてきた。

『あのさ。

皆、俺の誕生日祝ってくれるみたい。

その。

嫌だったら皆に断るけど。

やっぱりダメだよね？』

メンバーさんがお祝いしてくれるのに
断らせるなんて出来るわけないよ。

それに、やっぱり弟のお願いには
とことん弱いらしい。

私はその一択の選択肢を選ぶ。

『わかった。涼ちゃん。

メンバーさんも連れてきて大丈夫だよ。』

『本当に！？

Aありがとう！』

彼の喜んでる声を聞いて自分の
選択が間違えじゃなかったと思う。

そして、私は大切なことを
聞き忘れてるのに気づいた。

『あっ。ねぇ涼ちゃん。

メンバーさんて何人来るの？』

そして弟の答えに私の時が止まった。

忘れていた。

いや正確には、最近は彼と大学の話しか
しないから影に隠れていた。

伊野尾さんも弟と同じグループだったことを。