心の距離【Kei.I】 Second (ページ11)

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直面する悩みページ11

伊野尾さんの提案に思考が一瞬停止する。

それを動かそうと今言われた言葉を
頭の中で反芻する。

『友達？

私と伊野尾さんが？』

私は反射的にもっともらしい
否定の言葉を口にする。

「無理です！

男の子の友達なんて絶対に無理です！！

しかも伊野尾さんはアイドルですよね？」

『アイドルと友達になる』

同姓だったら問題ない。

だけど異性で友達になって
もし変な噂が出たらそれこそ
彼に迷惑が掛かる。

私の心配をよそに伊野尾さんは特別
気にしてない口調で話しかける。

「べつにぃ

付き合おうって言ってる
わけじゃないもん。」

『それはわかってる。

むしろ、付き合うなんてもっと考えられない』

私は焦りながら彼に反発する
言葉を発した。

「でもっ。

私は今の生活に満足しています。

男性を避ける生活にも慣れて
今は当たり前になってきたし。」

『当たり前』

私は自分で発したこの言葉に
自分で傷ついた。

そして彼は私の心を見透かしたのか
更に問い掛けてくる。

「それ。

本当なの？

本当に今の生活に満足してる？」

痛いところを突いてくる。

そして、私は弟からの言葉を
再び思い出した。

『鈴花には男の人を好きになる
幸せを知ってほしいんだ。』

たしかに、涼ちゃんには今まで
たくさん心配を掛けてるのは自覚している。

彼の思いも伝わった。

だから、その最初の段階で男友達を
作るのも理解できる。

分かったからこそ弟からのおねがいの
『男友達を作ってほしい』に
少し前向きになっていた。

その気持ちを伊野尾さんにも伝える。

「たしかに。このままじゃ
ダメだってわかってます。

一生、男性を避ける生活なんて
限界があることも。

だから、最近は男の子の友達を
作ろうとしてみたんです。

だけど・・・」

そこで、私の言葉は途切れる。

この先は私が抱える悩みに繋がる言葉。

私はそれを躊躇いながら口にしようとする。

けれどそれよりも早く伊野尾さんは
私が言いたいことを知っているかのように
優しく私の代わりに口にする。

「最後まで言わなくても大丈夫だよ。

わかってるから。」

一旦言葉を切る伊野尾さん。

彼から目が離せない。

そして、続けて私の悩みを彼は口にする。

「男友達って簡単には作れないよね？」

彼の言葉にドキッとする。

『男友達が作れない』

そうこれが私が直面している悩みだった。