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12.大人の境界線 ページ12

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最近歩ちゃんは首筋に赤い痕をつけてこなくなった。
安心したような、心配なような気もする。
きっといろんな人が気がつくその痕を惜しげもなく出して仕事をする彼女に
最初は凄く不安を覚えていたけれど
なくなったらなくなったで、怖い。



「好きな人とはどうなの?」
「それがね…まあいい感じといえばいい感じなんだけど…実は」




彼女にだけは話そう。そう決めた。
好きな人が、高校生だっていう事を。



「いいんじゃない?」



きっと彼女はそう言うと思った。
けれどそのとき私は彼女の置かれている状況を聞けなかった。
数日後。彼女は目を腫らして、明らかに元気がない様子だった。
仲がいいけれど、立場上は会社の同僚。
学生時代のお友達とは違う。
遠慮したほうがいいのかなって思ってしまう。
こんな、見せ掛けだけの関係が溢れてる。




「中曽根さん、彼氏とうまくいってないんかな」


中曽根さんとは歩ちゃんのことだ。
何故か真坂さんがそんな事を言う。




「さあ…どうなんでしょうね」
「武居さん仲いいのに知らないの?」



仲がいい……のかな。
高校生が好きだなんて言ったら、もっと何か言われるかと思ってた。
けれど彼女は何も言わずにいいんじゃない、とだけ言った。
高校生なんて、子供じゃん!とか
くだらない文句でもいいんだ、それが本音なら。
たいした仲じゃないから、たいした感想も言い合えない仲なんだ。




「聞いちゃいけないこともあると思うので」



私がそう言い返すと、真坂さんは不思議そうだった。



「そう?武居さんて、ガードが堅いよね」



真坂さんはもっと策士だと思っていたけど
意外と単純明快な人なのかな。



「俺だったら聞くかな。答えたくなかったら答えないだろうし」



そう言われて気づいた。
私が線を引いているんだ…彼女に。
歩ちゃんのこと、仲がいいと思っていたけどそれはあくまで会社の中だけでの話。
いつもつけていた赤い痕のことも
泣きはらしたような目蓋のことも聞かなかったのは自分自身だ。

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(プロフ) - ねこみやさん» ありがとうございます♡ (2月8日 23時) (レス) id: 42242e81de (このIDを非表示/違反報告)
ねこみや(プロフ) - まじで最後が尊すぎてめちゃくちゃ涙出ました尊すぎて( ; ; ) (8月27日 20時) (レス) @page41 id: 3ca32de087 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みーちゃんさん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます! (2023年4月26日 1時) (レス) id: 42242e81de (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃん(プロフ) - 泣きました。 (2023年4月26日 0時) (レス) @page41 id: 0002bb722b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - mooさん» お褒めのコメントありがとうございます! (2022年6月26日 23時) (レス) id: 42242e81de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年6月14日 19時

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