君にロックオン！【青根高伸】 (ページ10)

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10.手狭な空間ページ10

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｢青根くん、夕飯は食べたの？｣

部屋を軽く片付けながら聞いてみる。
この巨体に、私の1Kの部屋は少々狭そうだ。
彼の身長は、180cm台ではない気がする。
もしかして190はあるかな？
彼は首を横に振った。

夕飯の買い物って言ったって、豆腐一丁と納豆のパックと鯵一匹しか買っていない。
高校生の男の子だし、こんなに大きい体しているし
買ってきたものと、冷蔵庫の残り物集めても
こんな量じゃ足りないだろうな。

｢あ！！そうだ｣

さっきポストから出した、チラシをばらばらと広げる。

｢ピザ好き？？｣

そう聞くと彼は頷いた。

｢じゃあ、頼んでみる？私、ピザの宅配って頼んだことないの｣

実家は結構な田舎だ。
ピザの宅配があるお店なんて、近くにない。
ずっと気になっていたけど、宅配は1200円以上からで
一人で食べる量を頼むには金額が足りなかった。

｢届くのに1時間もかかるんだ？知らなかった…仙台は都会だね｣

注文の電話を入れたら、到着まで50～60分です、と言われた。
田舎者の私には、カルチャーショックだ。

｢仙台の出身じゃないのか｣

青根くんが聞いてきた。
部屋に入って、初・発言だ。本当に無口な子だ。

｢うん、実家ド田舎でさ。4月から就職して一人暮らし始めたの｣

話し始めて、私もたくさん聞きたいことがあったんだ、と思い出した。

｢青根くんて何年生なの？｣

｢3年…｣

せめて1年生じゃなくてよかった。
誕生日が来ていたら、18歳か。
それでも3歳年下。
いや、単純に年じゃない。
学生と社会人ってだけで、大きな差が開いている。

｢受験とか…考えてるの？｣

｢いや、就職する｣

伊達工業…地元の学校じゃないから、どんな学校かわからないけど
工業高校だし、就職する子も多いのかな。
青根くんはすごく無口だけど
なんでだろう、そんなに嫌じゃない。
こっちから聞いたことにはちゃんと答えてくれる。
それだけで安心感があった。