碧いなみだ、空を紡ぐ。 ⑤ 【ars】 (ページ7)

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「すみません！！
あのひと、このコのストーカーなんです！！」

交番のガラス戸をあけるなり、ハルはたちすくんでいたリュウをゆびさしおまわりさんにそうつげた。

えええええ。

まさか。

その手？！！

「きょうもずっとついてこられていて…
もうどうしたらいいのかわからなくて…」

ぜったいうそ泣きだろう。

ハルは顔面をおおいながら、切実に訴えた。

そして、わたしの脇腹をひじでつつくと小声でささやく。

「Aがやらなくてどーすんの？！！」

ふたりいたうちのひとりのおまわりさんが交番をでて、リュウのほうへむかっていった。

のこったおまわりさんにいすをすすめられ、とりあえず腰をおろすわたしたち。

そして、わたしも泣きの演技をはじめた。

「ずっとつきあっていて、夏にわかれたんですけど…
彼が納得してくれなくて…
それからずっとつきまとわれていて…
こ、こわくて…
でも、ひとりじゃどうにもできなくて…」

ストーカー罪ってどんなもんだったっけ？

ああ、わからない。

おまわりさんがなだめつつも書類を用意してくれているが、わたしのあたまは「ストーカー規制法についてだれかおしえてくれ！！」でいっぱいいっぱい。

そこへ外にでていったおまわりさんがリュウをつれてもどってきた。

ハルがすかさずはなしだす。

「さっきも急にこのコのうでをつかんできたんです
またなにかされるかもと思ったらこわくて…
あたし思わずこのひとのことつきとばしてしまって…
ともだちひとりすらまもれなかったら… あたし、一生自分のことゆるせない…」

これでかばんがほうられていたことにも理由がついた。

わたしとハルはふたりしてハンドタオルやらティッシュやらを目がしらにあて、さめざめとなみだをながす(ふりをする)。

しばらくのあいだ、わたしがうけた被害をつらつらとはなしていたのだが。

おまわりさんがひろげた書類にいよいよ住所やらなまえやらを書きこまなくてはならなくなったとき、ふいに戸がひらきひんやりした外気が交番内にながれこんだ。

なにげなくふりかえってみると、

「Aちゃん！！」

そこにはキャップにマスクすがたの翔くんがいた。

「しょ、」

なまえをよびそうになったが、ここではまずいかと思い、わたしはとっさにくちをつぐんだ。

が。

「よかった、無事で…！！」

あろうことか翔くんはわたしをぎゅううとだきしめてきたのだ。

…そういう設定か。

＊