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＊
瞳をまんまるにみひらいたままふりかえった智くんのほっぺたにかるくちゅっとキスしてみせた。
身長がおなじくらいでよかった。
わたしはふありとうでをほどくと、なにごともなかったかのようにみんなの輪へとむかう。
「…Aさん、いちゃつくのはあとにしてくださいよ？」
コンロをかこみよっぱらいはじめた３人はべつとして、暗がりの中でもニノだけにはみられていた。
「ニノがこうやってわたしにはなしかけてくるからいちゃつくことになるんですうー」
「は？」
「嵐のファンもやめてほしいんだってー」
「え？」
わたしはクーラーボックスからあたらしい缶ビールをとりだして、にんまりと笑った。
頭上にひろがる濃紺の夜空にはかぞえきれないほどの星がちりばめられていて。
けけけけけとやもりの鳴き声がどこからともなくひびき。
しずかにうちよせる波の音に、みんなの笑い声が夏の島にとける。
ビールもごはんもおいしくて。
となりには智くんがいる。
ぴったりはまる手と手はあの日からなにもかわらない。
「あー、なんか、ゆめみたい」
ほあっとため息をつきながらわたしはつぶやいた。
「ゆめみたい？」
智くんはまるでことばあそびをするかのように復唱してきた。
「ゆめ、みたい？」
「ゆめ、みたい」
「ゆめ、ずっと、みたい？」
＊
ゆめはね、きっとみつづけるものなんだ。
さめることなんか、もともとないんだ。
わたしは５色のかけがえのない虹を目のまえにして思う。
だれしもがまっすぐはしりつづけられるわけじゃない。
にげつづけていたあの日がなければ、わたしはいまここにいなかった。
つまづくときもあれば、ころんで大けがしちゃうこともある。
なみだがとまらないよるもあれば、まぶたがはれて起きあがりたくないあさもある。
でも。
いま、笑ってる。
みんな、笑ってる。
＊
海と空と太陽は毎日ここにある。
きらきらまっすぐでまぶしくて。
たのしくて、たのしくて。
ふたりで手をつないでどこまでもいけそうだね。
だから、智くん？
「A、だいすき」
そうやって、ずっとここでんふふって笑っていてね。
＊
「ありがと」
だれに？
…ニノ、に。
えーーーーー。
うそだよ、みんなに。
みんな？
うん。
でも、
いちばんは、
智くん、に。
あの日、みつけてくれて、ありがと。
＊
終わり
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
