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虹のむこうがわにいけたら、ゆめがかなうんだって。
わたしたちは足をほうりだして、手をうしろについて、半身海につかっている。
水平線のむこうへすがたを消そうとしているおおきなまあるい太陽をみつめながら。
でも。
わたしはそこへいかなくてもいいかな。
ここにいるだけで、智くんのとなりにいるだけで、わたしの世界は虹色にかがやく。
智くんがもぞもぞと左手をうごかしたかと思ったら、わたしの右手をとりきゅっとこゆびどうしをからませた。
かるくもちあげられたふたつのこゆびは低い位置にうかぶまっしろな雲を背景に水面に影をおとす。
わたしは智くんの横顔をみあげた。
キャラメル色だった髪の毛は黒くそめられていて、それがときのうつりかわりをあらわしているようで、すこしさみしくなったけれど。
ふにゃりとゆるんでいる智くんの表情はかわっていなかった。
わたしの視線に気がついたかのように、智くんはわたしのほうへ顔をむけるといった。
「Aさ
嵐のファン、もうやめちゃいなよ」
いきなりそんなことをいわれたわたしはおどろいた。
「え、なんで…」
「おいらのこと、ずっとみててくれたんでしょ？」
あのよるからわたしはテレビや雑誌で活躍している智くんのすがたをたしかに追いつづけてきた。
「おいらがさぼらないでがんばってたこと、ちゃんとみててくれたんでしょ？」
わたしはこくりとうなづく。
すると、智くんは八の字まゆげをさらにさげていった。
「もう、みてなくていーから」
「…え」
「もう、嵐のおいらはみなくていーから」
どういうこと…？
わたしがとまどっていると、智くんはからませたこゆびにぎゅっとちからをこめた。
「これからはここにいるおれのこと、みてて」
ゆうひにてらされた智くんの顔は息をのむほどきれいだった。
「ずっと？ みてていいの？」
「うん」
「智くんだけを？」
「うん」
「じゃあ、そうする」
わたしがそうこたえると智くんは満足そうにちいさくんふふと声にして笑った。
そして、ゆっくりと顔を近づけるとおでこどうしをくっつけた。
お互いの吐息がくすぐったい。
智くんのうでがわたしの背中にまわされて、ゆらりとこゆびをとかれ、かわりにふわりとわたしのつめをなぞる。
「A」
そう智くんがあまくとろけはじめた声でわたしをよんだそのとき。
すでにわたしは気がついていたんだ。
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
