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＊
きれいな手。
まっすぐのびたゆびに、かたちのいいつめ。
わたしは気がついたらそのてのひらをつつみこむように、智くんの右うでごとだきしめていた。
「…うん」
１度ふれてしまったら、歯止めがきかなくなった。
かたまりすぎていた欲がとめどなくあふれだしてくる。
「ね…？」
「うん」
智くんはあいていた左手をわたしの背中にするりとすべらせたかと思うと。
そのまま背骨がおれるんじゃないかっていうくらいのちからをこめてぎゅううとわたしをだきしめた。
くるしかった。
くるしすぎて、うれしすぎて、うれしすぎて、うれしすぎて。
智くんのうでのなかでわたしはひたすらうなづいた。
「ん」
智くんもちいさくこたえてくれる。
『あいたかった』
「うん
わたしも、あいたかったよ」
ゆっくりとからだをはなすと智くんの瞳にわたしがうつっているのをみつけた。
その瞬間、わたしはこの３年から解放された。
智くがきれいなゆびでふわりとわたしの目じりにふれた。
「おいら…
ここにいるよ？」
わたしのなみだはとめどなくあふれる。
智くんはおやゆびでそれをぬぐいつづける。
泣きたいときは泣けばいい。
がまんすることなんかない。
ひたすら泣けばいい。
気がすむまで泣けばいい。
ぜんぶぜんぶながしてしまえばいい。
もう智くんとはなれることはないんだから。
ほっぺたに感じる智くんの熱がわたしを笑顔にさせる。
よろこびをかくせなくなったわたしは、そのままがばっと智くんにとびついた。
「わ！！」
とつぜんのことでわたしをささえきれなかった智くんがバランスをくずし、そのまま海の中にたおれこんだ。
「……」 ←びちょびちょ
お互いの髪からしずくがぽたぽたれる。
きっと顔もからだも砂まみれ。
て、この状況…
「んはは！！」
智くんは背をそらしておおきく笑い声をたてた。
「笑ってんじゃないわよー、もう！！」
彼の笑顔につられて、わたしにもくすくす笑みがこぼれる。
「だって、だってえー」
智くんはひーひー笑いながらおなかをかかえている。
智くんが笑えばわたしも笑う。
わたしが笑えば智くんも笑う。
いつもいざっていうときかっこよくきめられないけれど。
それがわたしたちなら。
「このままずっと、いっしょに笑ってたい」
うん。
「いっしょに、ね」
そして、わたしの左手と智くんの右手は海の中でつながれた。
＊
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
