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だきつきたかった。
ほんとはいますぐにでもだきついて、ぎゅううってだきしめて、ぎゅうぎゅうにだきしめてもらいたかった。
すぐそこに智くんがいる。
手をのばせば智くんにふれられる。
わたしの鼓動はとくんとくんと徐々にはやまる。
が。
目のまえの状況についていけないわたしは目だけをきょろきょろとうごかす。
これは…
「きれいな海ですよねー」
「ほんとちょーきれー！！」
カメラにむかって潤くんと相葉くんがビーチを紹介するように両手をひろげてみせている。
「はい、はい
そうなんですよ！！」
翔くんがイヤモニを片手でおさえながらだれかと会話している。
「天気もいいし、さいこーでーす！！」
テンションがあがったらしい相葉くんは波打ち際へかけだした。
「おい！！
ころぶんじゃねーぞ！！」
相葉くんをとめようと注意した潤くんも笑顔でそのあとを追いかける。
「ごらんいただいておりますように、きょうはかなり自由な雰囲気です、はい」
にっこりとカメラにむきあう翔くんはそのままつづけた。
「特例といいますか、異例といいますか
本日は僕ら５人のみでお送りします
…ね、ニノミヤさん」
すると、カメラを手にしていたニノがくるりとレンズの向きを自分のほうへむけた。
なんだかよくわからないが、おおきな黒いにもつも背負っている。
「カメラワークはまかせてください、なれてますから」
「いやいや、うたってるときはカメラ固定しますから
でないと、ニノミヤさんうつらないでしょ」
どうりでひと気がないはずだ。
機材もないはずだ。
５人だけでここにきたんだ…
しばらくのあいだスタジオとやりとりをしているみんなのすがたを横目に、わたしはそろりそろりと岩場の影に移動した。
ニノの手におさめられているカメラにうつらないよう、自分のすがたはもちろん、砂浜にのこるあしあとにも気をつけて。
けれど、そんな細心の注意をはらっているわたしをしってかしらずか、智くんはわたしをふにゃりとみつめつづけている。
…なんでこっちみてんのよ。
おかしいでしょ！！
ちゃんとカメラのほうむいてなさいよ！！
さっきまでのおセンチなきぶんはどこへやら。
わたしはしっしとはらうように片手をふってみせた。
すると、智くんはおもむろに右のてのひらをひろげるとそのままきゅっとにぎりしめ。
『…………』
ちいさくくちびるだけをうごかした。
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
