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＊
わたしはひとり木々のあいだをてくてくあるく。
島の中心に立つ灯台をめざす。
あいかわらず舗装された道路は港のまわりだけ。
自転車どころか車もとおらない。
めええーと野生のヤギが鳴く。
木漏れ日と葉の影のコントラストがわたしの意識をどんどんとぎすませていった。
ビーチサンダルからとびだした赤いつまさきはあの夏の連想。
ゆるやかな丘をのぼりきると、わたしは灯台をかこむ柵によりかかり、おでこににじむ汗をぬぐった。
わたしはゆらりと島の外周へ視線をめぐらす。
喜納島に点在している岩場にかこまれたちいさなちいさなビーチ。
目をほそめつつ、背伸びしたりかがんだりしながら、ひとつずつビーチを順番にじっとみつめていくがひとの気配がほとんどなく、特にかわったところもない。
港におりたったときも、島内をあるいていたときも、わたしのしっている日常の喜納島だった。
くわしいことはなにもきかなかったわたし。
どこのビーチをえらぶのかもわからないから、島全体をみわたせるここにいることしかできない。
あのとき智くんがもたれかかっていた柵にそっとふれる。
木々の葉がさわりと音をたてると、その風はここちよくわたしの前髪もゆらした。
水平線にうかぶ与儀島。
その奥にはぼんやりと伊波島の影。
自然とあの２週間のことを思いだしていた。
そのときだった。
かすかだけれど…
「…？」
ぱらぱらぱらぱら
わたしは思わずあたりをきょろきょろ見わたす。
耳をすましていないときこえないほどだったそれは徐々に存在感を増していく。
ぱらぱらぱら、が、ばらばらばら、にかわる。
どこかできいたことはある。
でもなんなのか思いだせない。
ばらばらばらばら
柵からのりだすようにしてわたしは眼下にひろがる３６０度の海をじっとみていた。
なんだ…
なんだっけこれ…
くびをかしげるわたしの前髪をふきぬけた風がまたもやぱさりとゆらす。
「…まさか、空？！！」
海ばかりに気をとられていたわたしはがばりと顔をあげた。
伊波島の港、わたしはまっピンクのスーツケースをいすがわりにしていた。
智くんはいまにもおっこちそうな場所で海底をのぞきこもうとしていた。
ネオンイエローのＴシャツを派手じゃないかとひっぱってみせてきた智くんにわたしはきいた。
『嵐専用ジェット機はまちがいなくないのよね？』
「ヘリならあったの…？」
＊
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
