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＊
もしも虹のゴールをくぐれたら。
この手にはなにがつかめているのかな。
さめることのないゆめなんて、
あるのかな。
ねえ。
智くん。
智くんはわたしが思っていたよりもずっとつよいひとだったのかもしれないね。
臆病なだけで、こころの中には頑丈でまっすぐなやさしい芯をもっていたのかもしれないね。
＊
３年という月日はみじかいようで長い。
絶対にわすれないといくら誓ってみても薄れゆく記憶はとめられない。
でも。
わたしの手もとには消えようのないまぎれもなくかたちあるものがのこされていた。
伊波島のビーチでひろったいいかたちの貝がら。
夜空をきりとった絵はがき。
智くんが描いてくれた海の絵。
それに、この島の海とゆうやけ色のアスタリスク。
どうでもいいやってなげだしたくなったときも、意味なくない？ ってくじけそうになったときも、ひたすらつかれてねむりこけていたときも。
いい歳して未来にゆめ描いちゃってる自分を嘲笑する瞬間も、わたしのいちばん星はきらきらとひかりをふらせてくれていた。
だから、わたしはひたすら智くんを目だけで追いかけつづけてこれた。
智くんの瞳にはなにがうつっていたかわからなくても。
わたしはカケてきたんだ。
いつもいつも『もうにげない』ってきめるくせに、にげつづけてしまっていた自分は捨てた。
まっすぐに。
これからはまっすぐにはしってみせる。
つぎにこの左手で智くんの右手をつかめたら、もう２度とはなさない。
あのとき手をはなしたことが無駄じゃなかったって、そう思わせてあげるから。
おねがいだから。
またその瞳にわたしをうつして。
＊
ゲンさんの民宿に２泊したわたしは東港の防波堤のはじっこに腰かけながらエメラルドグリーンの海の上あしをぶらぶらさせる。
そして、いつかとおなじようにわたしはぱたりとうしろにたおれてみた。
コンクリートがじりじりと熱をもっている。
目のまえには白い雲がすぐそこにうかんでいた。
わたしは思わず左手をそこへむけてのばす。
不思議とあのクリスマスのときみたいなどきどきや緊張はない。
とまどいやためらいもない。
からだはちゃんと地べたにぺたりとはりついているし、ゆびさきだってふるえていない。
ただただまっすぐにふりそそぐ太陽がまぶしいだけだ。
「あいにいくよ」
わたしはぽつりつぶやくと、ゆっくりと左手をにぎりしめた。
＊
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
