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＊
「『ただいま』！！」
与儀島の西港までむかえにきてくれていたゲンさんにわたしはおおきく手をふる。
「Aちゃん、よく帰ってきたなあー」
がははと声をたてるゲンさんもなにもかわらない、といいたいところだけれど、
「…太った？」
色あせたポロシャツのすそがはちきれんばかりにおなかがでている。
ゲンさんはそのおなかを自分でぽんとたたくといった。
「成長期さー」
なわけないだろ。
ただののみすぎ、たべすぎだろ。
おなじみの赤いおんぼろバンにスーツケースをつめこんでくれるゲンさん。
「窓はしまらないままなのね」
後部座席にすわったわたしに運転席にのりこんだゲンさんがルームミラーでわたしをちらりとみるといった。
「Aちゃん、なんだか雰囲気かわったなあー」
「え？ そう？」
いつもなら『かわらないなあー！！』っていってくるはずなのに。
「しゅっとしたよ、しゅっと、なー」
しゅっ？
「なにそれ、ほめことばですか？」
「そりゃそうさー、ほめてるほめてる」
舗装されている道路のはずなのにがたがたときしむこのくるまははたして車検ちゃんととおっているのだろうか…
なんだかよくわからないゲンさんのことばの意味よりわたしはそんなことを考えていた。
＊
「ゲンさーん！！
もう１本ちょーだい！！」
たのしいお酒だ。
ただっぴろい板の間のリビングで奥さんのつくってくれたおいしい沖縄料理に舌鼓をうちつつ、わたしは手酌で瓶ビールをグラスにそそぐ。
つけっぱなしのテレビからは沖縄ならではのＣＭがながれている。
あけっぱなしの窓の外からはけけけけけとやもりが鳴いている。
「あー、いいよるだー」
まるで我が家のようにふるまうわたしは藍色のざぶとんの上からあしをなげだした。
「そういえばAちゃんよー」
わたしのぶんの瓶ビールと自分の泡盛を用意したゲンさんはどかりととなりにすわった。
「あのあとカズくんにすぐ連絡しなかったんだって？」
「あー、うん…」
そういえばそんなこともあった。
３年まえにわたしが与儀島から帰京するとき、ゲンさんは港でわたしにさけんでいた。
『カズくん、連絡まってるってよー！！』て。
「だって、あのときはたった２日間いっしょにいただけだったし
国民的アイドルにかんたんに連絡できなかったっていうか」
ぼそぼそいいわけしながらわたしはニノのことばも思いだしていた。
＊
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
