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「きょうはAさんに相談があって」
うんうん、おねいさんがなんでもきいちゃるよ、潤くん！！ ←めんどくさいのではやくもなまえでよぶ。
「八重海諸島の離島について、おしえてほしいんです」
「え、旅行でもいくの？」
そう返答したわたしにとなりの翔くんがぶはっとふきだし、
「仕事のはなしっていったでしょ、Aちゃん」
と、つっこんできた。
コンサートに限らず近頃はテレビの音楽番組のステージ演出も担う潤くん。
きけば、今年の夏におこなわれるスペシャル番組で離島からのライブ中継を考えているとのことだった。
「いままでに宮良島のビーチから中継したアーティストさんはいるんです
ただ、離島でっていうのは前例がなくて」
わたしはいつのまにか眉をひそめていたんだろう。
その表情に気がついた潤くんは不安げにわたしをのぞきこんでいった。
「…むずかしいと思いますか？」
その質問にわたしは即座にうなづいていた。
「機材とか、ぜんぶ船便になるんだよ
それに、宿泊先とか、プライベートな空間はほぼないし」
いいながらわたしは思った。
そんなことをつたえたいんじゃない。
きっとテレビで中継された島は『嵐がおとずれた島』になる。
この２年で、嵐のファンになって、ロケ地めぐりをするひとがいることをしった。
禁止されているわけでもないし、だれかに迷惑をかけないかぎりそれは決してわるいことじゃない。
でも。
どうなんだろ。
わからない。
「わたしはね、ただの観光客でしかなくて
なにを語る知識も資格もないから」
わたしみたいな観光客がふえた島は、ここ数年でずいぶん変わった。
お店やホテルがふえて、空港もおおきく建て替えられて、いわゆる『便利になった』。
それがいいことなのか、わるいことなのか。
『嵐がおとずれた島』になった島はどうなるのか。
わたしがひとりもやもや考えをめぐらせていると、潤くんはいった。
「俺はAさんの意見がききたいんだ
なにをいってくれてもかまわないから
思ったことをはなしてくれませんか？」
顔をあげると、潤くんはまっすぐにわたしをみつめていた。
「なんで、わたしの意見なんか…」
まわりにいっぱい相談できるひとはいるだろうに。
すると、となりにすわっていた翔くんがあったかいてのひらでわたしの背中にふれた。
「いままでにない、いいステージにしたいんだ
どうしても」
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
