１６５ ページ25
＊
「ありがとうございました」
きょうさいごのお客さまをお店の玄関口でお見送りする。
みあげた空はまだほんのりあかるくて。
空気もずいぶんあたたかくなった。
ぐるぐるまきつけていたストールとてぶくろはいらなくなって。
季節はもうすぐ春になる。
「あ、さくら…」
ふありとわたしの頭上でまったさくらの花びらはうすいピンク色。
ひょいと片手をのばしてみたらそれは予想外にもかんたんにわたしのてのひらにおさまった。
ちいさな花びらをじっとみつめる。
「新曲のタイトルとおなじね」
意味もなくうれしくなってしまったわたしにお店の中からタケルさんが声をかけてきた。
「Aちゃん、早番のところわるいんだけどもうひとりおねがいできる？」
わたしに予定などとくにない。
うなづいてタケルさんによばれていったのはＶＩＰ用の個室。
ということは…
「翔くん！！」
「Aちゃん、ひさしぶりー」
あいかわらずソファで新聞をひろげていた翔くんは顔をあげるとにっこり笑って片手をあげた。
翔くんにあうのは３ヶ月ぶりくらいだった。
「ちょうどいまね、さくら、つかんじゃったの」
「つかんじゃった？」
わたしはてのひらにおさめたままだった花びらをさしだしてみせた。
「翔くんがくる予兆だったのかも」
ふたりで顔をみあわせて笑った。
＊
「やっぱりきれいにしてもらうとすっきりするわー
ありがとう」
満足そうに自分のつめをながめる翔くんを横目にわたしはお道具をかたづける。
「ところでAちゃん、このあとじかんある？」
翔くんは唐突にいった。
「うん、ひまだよ？」
ひさしぶりだしのみにでもいくのかな？
わたしはあまり深く考えずにいたのだけれど。
「ウチの演出担当がAちゃんにあいたがってるんだ」
＊
「はじめまして、松本です」
わたしの目のまえにはコクのある濃ゆいお顔だちの《松本潤》。
あああ。
ついに嵐５人制覇だよ！！
きょうは記念日だよ！！
《松本潤》はサングラスをはずしＴシャツの胸元にひっかけると、くちびるの片側だけをにっともちあげてほほ笑んだ。
テレビや雑誌でみるより顔がちいさいぞ！！
それに、智くんやニノ、相葉くんはふつーの少年(←青年)なのに《松本潤》の放つオーラははんぱない。 ←翔くんはどこいった？
「これぞ芸能人…」
わたしは緊張ぎみにぼそりとつぶやいた。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 178人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
