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「世間はイベントにふりまわされすぎだっつーの
イブだからなに？
クリスマスだからなによ？！！」
わたしはナッツをくちにほうりこみながら毒づく。
「だれかとすごさなきゃいけないわけ？
わたしはひとり家でテレビでみれるだけでじゅうぶんだし！！」
くふふとくちもとに手の甲をあてて笑うニノの目はうるんでいてすこし赤い。
きっといそがしいんだろう。
おおみそかまでびっちり仕事だっていってたし。
でも、わたしはなにもいわない。
ひとのことを心配するのは趣味レベルなくせに、自分のことを心配されるのはすきじゃないことしってるから。
…そんな多忙な中、なぜきょうここに？
なんだかんだいってニノもイブにひとりっていうのがせつなかったのか？
「…やはりホレたか？」
「なにかいいました？」
「…あのさ、いつもききかえしてくるけど、ぜったいきこてるよね？」
するとニノはかたひじつきながら、にっこり笑ってこてんとくびをかしげてみせてきた。
「わたしにそれは通用しないよ」
この確信犯め。
小悪魔的しぐさもみなれましたー。
わたしがぐいっとグラスをかたむけたのをみて、ニノはくちをとがらせていった。
「大野さんよりさきに、Aさんにであいたかったです」
「はあ？！！」
ふきだしそうになったビールをあわててのみこむ。
「な、なにいって…」
まさか、ニノ、まじでわたしにホレたか？！！
いや、ありえない！！
「そしたら、俺…」
ニノはスツールから身をのりだして、まあるいてのひらをわたしのひざにのせた。
キャップの下にかくれたうるうるの瞳とすこしだけひらかれたくちびるがわたしの顔にどんどんちかづいてきて。
わたしは思わず背をそらす。
カウンターの上でゆれるキャンドルのちいさな炎がやけになまめかしく感じる。
「そ、そしたら…？」
「そしたら、ね…」
だめだ、近すぎてテレる！！
がまんできなくなって、ニノのからだをひきはなそうとしたときだった。
ニノが片手でなにかをことんとテーブルに置いた。
「こんなサンタクロースみたいな役割もしなくてよかったんですよ！！」
よいしょとスツールに座りなおしたニノはにやりと笑う。
「Aさん、なにどきどきしてるんすか？」
なれたはずなのに。
このひとたらしめ…
「自分がかわいいからってね、ひとをおちょくるなー！！」
わたしはんふふとほほ笑むニノのあたまをぱふっとはたいた。
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
