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年末に近づくにつれて、嵐の仕事量ははんぱなくふえていた。
毎年恒例のコンサートツアーにくわえ、レギュラー番組や年始の特番の収録。
「まだ年あけてないのに、和装で『あけましておめでとうございます』ですからね
毎年のことながら感覚がおかしくなりますよ」
ニノがこのまえそんなことをぼやいていた。
実際テレビでの放送はまださきのことだが、ある日本屋さんに立ちよったわたしはその現状を目の当たりにした。
「今年も… こりゃすごい」
テレビ誌はもちろんファッション誌やエンタメ誌、ほぼすべてといっていいほど嵐５人が表紙をかざっていて。
その半数以上が袴すがただった。
去年もそれはそれはすごかったけど。
「ぜんぶは買えないっつーの」
わたしはお持ち帰りする数冊をきめるためにかたっぱしから雑誌を物色する。
あー、この智くんかわいいなあ。
いや、こっちの智くんのがかわいいか？
わ、これもめっちゃかわいいじゃん！！
ページをぺらりとめくるたびにちがう表情をみせる智くんにわたしはどうしてもくぎづけになってしまって。
そんなとき、いつもふと思うんだ。
きっと何万人ものひとたちがこの雑誌の中の智くんを恋する瞳でみつめているんだなあって。
わたしとは生きる世界がちがう。
智くんの瞳にはうつっていないのに。
わたしは自分の瞳に智くんをうつす。
現実を考えるとのどの奥がぎゅっとくるしくなるけれど。
いまはこれでいい。
さめることのないゆめはあるって、わたしはカケたんだから。
＊
「イブなのにAさん予定ないんですかー？」
仕事帰り、自転車に鍵をさしていたところでお店からでてきた若いスタッフに声をかけられた。
「歳とるとね、きょうはただの１２月２４日でクリスマスもなにもないのー」
でもね。
「えー、そんなものですかあ？」
きょうはたいせつな日。
「そんなものよ
じゃ、おつかれさま」
わたしはぐるりとストールをまきつけなおすと、スタッフに手をふり自転車にまたがる。
…まにあうかな。
ちょっといそいだほうがいいかも。
きょうは相葉くんのおたんじょう日。
そして、嵐が出演する生放送の音楽番組がある日。
わたしは青と白のイルミネーションでいろどられた街路樹を横目に家路をいそいだ。
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
