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「すみません、おそくなりました」
「あいかわらずおいそがしそうでー」
仕切りののれんからひょっこり顔をだしたニノにわたしはあいさつもそこそこに「ビールでいい？」ときいた。
あれから２年の月日がたった。
嵐の活躍はめまぐるしく、年間のＣＤやＤＶＤの売上が記録的数字だとか、コンサートツアーの観客動員数が史上最高とか。
頂上がみえない山をぐんぐんのぼっていっているようだった。
ニノは役者としての仕事がふえ、今年は３本も主演作品を撮ったらしい。
「Aさんはさいきんどうですか？
かわりありませんか？」
ニノにあうと、ひとことめはかならずこれだ。
「うん、かわりないよ
平坦な毎日ー」
わたしは結局ずっとタケルさんのお店ではたらきつづけていた。
先生のサロンにいつかもどるきもちはかわっていないけれど、都心のお店で技術をみがくのは自分にとってもよい刺激になっていたし、なによりニノや相葉くん、翔くんからのたのみでもあった。
中でも特にニノ。
なにがそこまで心配で不安なのかまったくわからないけれど、どんなにいそがしい日々をすごしていてもじかんをさいて定期的にわたしにあってくれる。
わたしだってもうやばいくらいのオトナな歳なんですけど。
「…やはりホレたか」
「なにかいいましたか？」
「いえ、なにも」
はこばれてきたグラスをかつんとかるくあわせて、お互いぐいーっとビールをのどにながしこむ。
「ぷはあ、うまい！！」
「Aさん、完全におっさん化がすすんでますね」
ニノのことばは完全に無視して、
「そうだ、ビールのあたらしいＣＭみたよ
めっちゃかわいかった！！」
と、さいきんながれだしたＣＭのはなしをふった。
「ワタクシがかわいいのはいまにはじまったことではありま」
「智くんがさー、野菜でビールかくしてのんでたり！！
あと、翔くんがお肉むにゅむにゅもんでるときの顔！！
相葉くんはそこにいるだけで天使だしー！！」
あれからわたしは宣言どおり嵐ファンになったのだ。
街中で巨大ポスターにでくわしても、とほうにくれることはない。
かわりにわざわざ正面に立ってにっと笑ってみせる。 ←不審者か。
そして、こころのなかでいうんだ。
『ちゃんとみてるよ』って。
『わたしもつよくなってるかな？』って。
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
