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＊
海と空と太陽は毎日ここにあって。
きらきらまっすぐでまぶしくて。
たのしくて、たのしくて。
ふたりで手をつないでどこまでもいけそうだったね。
ほんとうはそんなことばかりじゃなかったのに。
わたしたちはふたりでにげてたんだ。
自分にあまくて、よわくて、つらくて、さみしくて。
だからこそ、いっしょにいれたんだよ。
＊
おおきな窓からさしこむ都会のネオンだけでじゅうぶんだったから、ベッドルームの照明はぜんぶ消した。
わたしたちはあのよるとは真逆だった。
ベッドにもつれるようにたおれこむことはしなかったし、服だってていねいに１枚づつおとしていった。
智くんの瞳にはわたしがうつったままだったけれど、わたしは泣かなかった。
ひたすら智くんをからだじゅうで感じようって。
それだけに神経を集中させた。
智くんはわたしにたびたびキスをおとした。
ほっぺたを両手でやさしくはさまれる。
存在をたしかめるかのように髪をなでられる。
ふわりとつめをなぞる智くんのゆびがきもちいい。
くびも、肩も、背中も、おなかも、ふくらはぎも。
智くんはわたしの全身にふれてくれた。
わたしはそのしずかなじかんと智くんに身をゆだねた。
どこもかしこもほぐされていく。
「…ん」
空気がちいさくふるえて、豪奢なベッドルームにとけた。
窓からのあかりでわたしに影をおとす智くんがほんとうにきれいだと思って。
智くんの背中にそっとうでをのばした。
しっとり汗ばんでいる智くんのからだは、わたしにぴったりすいついてきて。
そのからだをぎゅっとだきしめると、わたしは智くんと目をあわせていった。
「あいたいって、
いってくれてありがとう」
それまで眉根をよせていた智くんは、そのことばをきくとふにゃっと表情をゆるめた。
「…きこえた？」
おでこどうしをくっつけて、智くんはんふふと笑った。
「うん」
きこえたよ。
「わたしも、あいたかったから」
智くんはわたしがしゃべっているのに、くちびるをすりあわすようにキスをする。
「智くんに、あいたかった
ずっと、ずっと、あいたかった」
わたしのことばは智くんにのみこまれる。
いっそこのままわたしのことものみこんでくれればいいのに。
そしたら、あなたのみるものたべるものさわるものぜんぶおなじになるのに。
「だいすき、だったよ」
＊
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
