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はなせる智くんははなせなかった智くんとあんまりかわらなかった。
ことば数がすくないってニノからまえにきいたことがあったけれど、ぜんぜんそんなことなくて。
無口じゃないのに、どちらかというとおしゃべりなのに、あのときと印象がそんなにかわらないのは意外でもあった。
わたしたちはテーブルにひろげられたごちそうをビールといっしょにたいらげながら、あの２週間のことをはなしていた。
「伊波島はねえ、ほんとにきれーだったなあ」
「でしょー！！
もういうことなしだよねー」
「のみ屋もめしうまかったしなあ」
「もずくのてんぷらね、あれは最高だった」
わたしは白身魚にオレンジ色のなんちゃらフルーツのソースがかかっているおしゃれ料理をくちにはこぶ。
「うま！！
なにこれ、おいしい！！」
あー、高級料理はなんでもおいしいわー。
すると智くんがぽつりといった。
「おれは、あのてんぷらのがすき」
「…え？」
「まあ、これもうまいけどね」
なんだろ…？
たしかに伊波島でたべたもずくのてんぷらは、おいしかったけども。
わたしの箸がとまっているのをみると、智くんはローズマリーでどうのこうのしたグリルチキンやサーモンとアスパラガスの配色があざやかなタリオリーニのお皿をすすめてくれた。
「ほら、おなかへってるんでしょ？
いっぱいたべな」
「…ありがと」
智くんはふにゃりとうなづくと、思いでばなしをつづけた。
「ゲンさんといっしょにいった釣りもたのしかったなあ
ゲンさん、元気にしてっかなー？」
「ゲンさんは元気でしょ、あのひとから元気とったらなにもない」
わたしはふかふかソファから身をのりだし、チキンをくちにはこぶ。
うん、やっぱりものすごくおいしい。
「ニノがきたときのAの顔、おもしろかった
すげーびっくりしてんだもん」
にへへと思いだし笑いする智くんもチキンに手をのばす。
もぐもぐとくちをうごかすすがたがニノを連想させる。
「あの状況でおどろかないほうがおかしいから！！
てか、わたしも釣りいきたかったなー
置いてけぼりだもんなー、あーあ」
わたしはわざとうらめしそうにくちをとがらせてみた。
冗談でいったもので反応をまっていたわけじゃないから、ビールをぐいっとのどにながしこむ。
そしたら。
「釣りならこんどいっしょにいけばいーじゃん」
あまりにもさらりというから、思わずビールをふきだしそうになった。
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
