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＊
「ここからはAさんひとりでいってください」
ニノにそういわれたわたしはひとりくるまをおりた。
ばたんと音をたててとじられたドアは急にわたしを孤独にさせた。
スモークがはられた窓からみんなの影がうっすらとみえた。
まるでわたしが４人の存在を確認しおえるのをまっていたかのように、数秒ののち白のＳＵＶはしずかにエントランスから走りだす。
相葉くんの愛車が都会の街に消えてみえなくなるまでわたしはその場に立ちつくしていた。
それから、わたしは背後にそびえる建物に視線をうつす。
だれしもがしっている超高級有名ホテルだった。
「こんなかっこではいっていいものか…？」
なにも考えずに家をでてきたわたしは普段着にスニーカー。
でも、いまさらどうにもならない。
意を決してわたしは回転とびらをくぐり、ロビーへと足をふみいれた。
肌をさすような外気にさらされていた全身が一瞬であたたまる室温。
ワインレッドのふかふか絨毯。
そして、一気に目をうばわれたのはふきぬけの天井までのびるおおきなガラス製のツリー。
ところどころにゴールドの装飾がなされていて、まあ豪華。
しばらくぽかーんとくちをあけたままみあげていた。
こういうところにぽーんと部屋をとれちゃうようなひと、なんだよね。
離島のちいさなペンションや民宿はにあわないひと、なんだよね。
わたしは両手をきゅっとにぎると、ツリーからはなれエレベーターホールへむかう。
ほんとにいるのかな。
…いるだろうな。
いないわけない。
あうんだ。
わたし、いまから、あうんだ。
エレベーターはぐんぐん高層階へむけてのぼっていく。
どんどん距離が縮まっていく。
あとどれくらい？
あと何メートル？
あと何分？
心臓がおかしくなりそうなほどばくばくしてきた。
くるしい。
思わずエレベーターのかべにもたれる。
手も足もふるえだして、このまましゃがみこんでしまいそうだった。
だけど。
わたしにはつたえたいことがあるから。
あのときいえなかったこと、こんどはちゃんとことばでつたえるから。
るるる、るるるーるるーるる、る、るるるーるるーるる
るーるるるーるるるららー
わたしはほとんど無意識にいつものようにあのうたをくちずさむ。
もしも虹のゴールをくぐれたら。
この手にはなにがつかめているのかな。
さめることのないゆめなんて、
あるのかな。
＊
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
