碧いなみだ、空を紡ぐ。 ⑤ 【ars】 (ページ1)

今日:14 hit、昨日:25 hit、合計:59,624 hit

１４１ページ1

＊

わたしはあのボックスに手をのばし、ひっくりかえすいきおいでふたをあけた。

中がぐちゃぐちゃになるのもおかまいなしに、奥底にしまわれたままのあのスマホをとりだす。

５色の虹とひとつの星。

わたしはふありと星をひとさしゆびでひとなですると、はおったコートのポケットにスマホをつっこんだ。

『いま、みてくれてますかー？
元気にしていますかー？
ボクらは元気でえーす！！』

手をおおきくぶんぶんふる相葉くんのあたまを横からニノがぱしっとはたいていた。

いたずらっこみたいな顔であたまをぽりぽりかくと相葉くんはカメラにむきなおっていった。

『あ、えっと…
このうたオレもだいすきなの！！
だから、ぜったい、ちゃんときいてね！！』

きいたよ。

ちゃんと、きいたよ。

相葉くんのへたくそなウインクのあとには《松本潤》。

『僕からも、ありがとうをつたえたいです
ほんとうに… ことばにならないくらい感謝しています
きょうはその想いをのせてうたいます』

嵐ファンのお客さまがいつだったかいっていた。

ステージ演出はほとんど《松本潤》が手がけてるんだって。

もしかしたら、きょうも、きっと。

わたしはかばんを肩にかけると、照明を消すまえに１度だけ部屋をぐるりと見わたした。

ちいさなワンルーム。

電源がおとされてただの箱にもどったテレビ。

窓の外にはまっくらな闇。

わたしをてらしてくれるひかりなんかないのかもしれない。

でも…

『僕らはなにがあっても味方です
だから、あきらめないでほしい
自分の想いを、まっすぐにとげてほしい
なにかあったらかならずたすけるから』

いつかとおなじことばをやさしい笑顔で翔くんはくれた。

もううそだなんて冗談でも思わないよ。

こんなかたちとるなんて、つっぱしりすぎだけどね。

わたしは部屋の電気を消すと、暗がりの中はきなれたいつものスニーカーにあしをいれる。

まっしろにみがかれた大理石の床を何度もあるいたこのくつ。

『なにかあったときに、いや、なにもないときにも、このうたを、そして我々のことを思いだしてください』

わかったから。

『このうたは、』

もう、わかったから。

『あなたへの想いです』

ニノ。

ようやくおしえてくれたね。

ありがとう。

わたし、カケてみるよ。

ぱたんと玄関のドアをしめた。

＊