9.感情 ページ10
あれからまた半年。あの日から、私たちは喋らなくなった。
厳密には私が避けたって言ったほうが正しいのだけれど。
暗い感情には蓋をした。
蓋をするのは2回目で得意だから。
でも、抑え込むにつれて心が重苦しくなったように感じる。
＿＿＿それはきっと、気のせい。
「おはようございます」
「おぉ!おはよう。塔羽から挨拶するなんて珍しいな」
「今のままでは駄目だと思ったので、進級しましたし、心機一転ということで自分から話しかけることをモットーに頑張ります!」
それでも、そう感じてしまうから、私は外側にも蓋を…仮面をすることにした。
まるで別人だと自分でも思う。一日中、"誰か"を演じてるみたいで疲れる。
そうまでして得たモノはポーカーフェイスという特技しかない。
でも、それが今の私にとって必要だから。
「(まぁ、要は自分が傷つくのが怖いだけの言い訳だけど。気にしたら負けっていうことで)」
「塔羽さん、何か呼ばれてるよ」
「ほんとだ!ありがとう!」
顔が引きつりそう。
今まであんまり作り笑いしてこなかったツケが来たな。
頬を両手で少しグリグリと回して廊下に出ると壁に寄りかかる如月さんがいた。
一番予想してなかった人だ………
いや、私じゃないかもしれない。
「えっと、うちのクラスに何か用事＿＿＿＿」
「ない。お前に用がある」
思いっきり私だった。
「………………………………………」
「………………………………………」
とりあえず、人目のつかない場所まで来たけども。
え?何でずっと黙ってるの?え???
「……最近、アイツらと居ないらしいな」
「？………あ、そ、そうかな」
アイツらって言われて一瞬ピンとこなかった。せめて名前で言ってほしい。
で、何で如月さんがそれを聞いてきたかなのが謎すぎる。
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作者名：魔ゼロ | 作成日時：2020年11月19日 23時
