【エリオス】黒い羽を青空に。 (ページ3)

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2.代償ページ3

母にもう寝なさいと促されて毛布にくるまっても、寝れない。

それでもしばらく目を瞑っていると眠気が襲ってきて、眠りについた。

「……!お父さ＿＿＿」

ガチャ、と音がして飛び起きた私は玄関に向かった。

父は右目に包帯を巻いてそこにいた。

「Aが泣くことないだろ～?ほら、おいで」

「泣いてない………」

「そうかそうか」と父は私を優しく抱きしめた。
血の匂いが鼻を掠める。それだけでもう治らないと不思議と理解した。

言いたかった。もうそんな危ない仕事はやめてよと。
今度は腕が無くなるかもしれない。
足が動かなくなってしまう。
父の安心する声が聞けなくなる。
そう考えただけで心底ゾッとした。

でも、そんな事はお構いなしなのだろう。
この仕事を目指した時点できっと誰も止められないのだろう。
それは母から聞いた父がヒーローになる為の努力を知ったから。だから言えない。

「…………おかえり」

「ただいま」

喉まで出かかった言葉を、この4文字に変えて強く抱きしめ返した。