【エリオス】黒い羽を青空に。 (ページ11)

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10.優しい人ページ11

顔をしっかり上げた彼は綺麗なのを今知った。
前は顔を見るとか以前にあの感覚が強かったからな………
というか、本当にすごい美人＿＿＿＿＿

「……………」

「すいませんッ!!!」

ありえないほど睨まれた。
すると彼は、睨んだまま静かに、そして言い聞かせるように口を開く。

「お前は俺じゃないだろ」

「そ、うですね?」

「なら、独りになるのはやめろ。今のお前の笑う顔は嘘くさくて気持ち悪い」

………この人は優しいんだ。

言葉は乱暴だけど、ほぼ他人の私にここまで言ってくれる人を優しいと言わずして誰が当てはまるのだろう。

それか、本当に私の笑顔が気持ち悪すぎて見るに耐えなかったのかもしれない。
家も近いし、見たことぐらいあるのかな。

「(だとしても)」

これをやめたら、私はもう戻れなくなってしまいそうだから。

人の優しさは、温かさは私にとって毒になってしまった。

ごめんなさいとたくさん言いたい。ありがとうとたくさん言いたい。
あなたがその優しさを私にくれたことが心底嬉しい。

「＿＿＿＿如月さんに関係あるかな?」

「ッお前！」

「私の笑顔が気持ち悪いのは申し訳ないと思うけど、友達や家族もいるし、一人ってわけじゃないから大丈夫だよ」

キミがそんな悲しい顔することはないのにね。
優しいキミが傷ついていいわけないのに。

油断すると涙が出そうで、手を強く握る。

「………………………もういい」

「………………………」

「最後に一つ言っとく」

俺の前で二度とその顔をするな。

彼はそう言うと、帰って行った。