コート場の帝王１４【○○○！！】 (ページ9)

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帝王 640 ページ9

大佐渡「確かに、アレを【怪物】と言わずして何と言う」

1ヶ月半という短い期間、しかも海外のVリーグにトライアウトを受けに行ったのだからシャレにならない程忙しかった筈

が、それを微塵も感じさせない「完璧さ」

白鳥沢戦ではまだ使い切れていなかった“左”も、今は最初からそうであったようにさえ感じさせる

大佐渡「彼の努力と僕達のそれは天と地の差程あるかもしれない」

そして彼はそれを努力とは言わないだろう

ベンチに座る大佐渡は一人一人、教え子達の顔を見回した

この子達はあの“鬼才”には到底、技術も知性も何もかも足りない

でもバレーボールはチームだ、団体戦だ

一人対一人で勝てなくとも「仲間」とならきっと…

大佐渡「できない事をやろうとしなくて良い。それに態々こちらが慌ててやる理由もない」

拾って攻撃、単純じゃないか

大佐渡「いつもやってる戦い方をしなさい」

ニッコリと、今の椿原の彼らには落ち着く笑みを浮かべて言った監督

拾って攻撃

いつも通りの戦い方

確かに“サウスポー”として機能するあの男が怖い

しかし無理に止めようと躍起にならなくて良い

「細き流れも大河となる」

横断幕にもあるように、小さな事を積み上げて“帝人 A”ではなく“烏野”に勝とう

越後「おーし、この烏野押せ押せムード変えたろうぜ！」

椿原「「ッシャア！！」」

大佐渡「ふふふっ」

エンジンを組み直し、掛け声と共にコートに戻っていく選手達

その背中はもう迷いなど無かった

・

『ふっ！(ドパッ』

田中「ナイスキー！」

実況「またも決まった帝人のスパイクーッ！」

解説者「影山君、タイムアウト明けから積極的に帝人君を使っていますねぇ」

実況「巧みな戦術に輝る黒い刃！試合は中盤戦に突入ですっ」

烏野と椿原、両校とも硬さはもう無かった

繰り広げられる長いラリー

それに終止符を打ち、最後に咲うはどちらのチームか

日向「オブ！(ボゴッ」

月島「っ、(ボッ」

田中「ふッ(トンッ」

日向のレシーブも、月島のトスも、田中のリバウンドも

バレーボールは“全て”が繋がっている

滝ノ上「…なんつーか、育ったな」

嶋田「！…嗚呼」

町内会チームとして彼らと戦った時とは大幅に違う

勿論技術もだが、顔付きも

彼らの目覚しい成長ぶりに、スタンドから応援する2人は少しだけ涙ぐんだ