コート場の帝王 １１【○○○！！】

帝王 438 ページ38

ズダンッ

キュ、キュキュッ





『っはぁ、…もう一本！』

影山「はい！」








只今の時刻、18:30。

あと30分でAはここ「味の素ナショナルトレーニングセンター」を出発する。


なのに未だに自主練習をしていた。









影山「Aさん、準備しなくていいんですか？」

『大丈夫、昨日全部やっといた』





10分前に侑が荷物もってきてくれるし、と言った黒髪の美青年はグイッと袖口で汗を拭う。




イタリアまでのフライト時間は約13時間。


まず、羽田空港国際線ターミナルに電車で1時間半かけて向かい、次に22:56離陸の飛行機に搭乗する。

すると向こうには時差など含め、朝一番で着く予定だ。








影山「長旅ですよ、ギリギリまで練習してたら疲れて本調子でないかも…」

『いや、そこは大丈夫。
向こう行って帰ってきたらすぐ春高だろ？
限られた時間の中で、できるだけ何回も合わせたい』

影山「わかりました」






影山は合宿が終われば宮城に帰り、チームメイトと練習をして彼らとの感覚を取り戻す事が出来る。


しかしAは影山や月島(日向)とは違い、更に長い期間帰って来れないため、本当に直前まで合わせての練習が出来ない。



その為、こういった空いている時間はギリギリだとしても、コンビネーションの練習に当てているのだ。










『今のトスどうだった？』

影山「すげぇ打ちやすいです！」

『っし、そしたら後は…』








昨日と今日で完成されかけてきている“新技”


話の流れ的に「ひとつ」ではなく、ソレは「複数」あるようだ。

誰の目にも止まることなく、密かに行われていた2人だけの特訓。








侑「Aー！荷物持ってきたでー！！(バァンッ」

『おーサンキュー』

侑「てかはやくジャージ着て！皆ロビー来とるよ！」







体育館の扉を雑に開けて出てきたのは侑で、その肩には大きめのボストンバッグが掛かっていた。

侑が来る＝出発10分前ということで、これをもって影山とAの「新技特訓」は終了。




後は部活の後残ってやるか、昼休みもやりましょう、良いけど大地さんに怒られない程度にな




高校に帰ってからの打ち合わせをした2人。


時間はいくらあっても足りない位なので、休み時間を使って練習するのは全然良い。

しかし、オーバーワーク！と澤村に叱られないか、そこが心配だ。




2人は鬼瓦のような顔の主将を思い出して身震いし、入口に立つ金髪の彼の元へ急いだ。

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